千三十六話 体力は必須
「では、早速やりましょうか」
「はい!!」
あれこれ話し合いが終わると、魔力回復ポーションを飲んだヌレールアは早速魔力操作の訓練に取り掛かる。
全身に魔力を纏うだけではなく、体の一部に魔力を纏うことも可能。
一流の魔法使いを目指していた貴族の令息なだけあり、そこまでは問題無い。
ただ……体に纏う魔力の形を変形させ……その状態で歩き回るとなると、上手く形を保てなくなる。
「うっ……く!」
「足を止めないように。まずは歩きながら魔力の形を固定し続ける。そしたら次は走りながらと、こういったことが出来るようになれば、詠唱破棄などの技術にも繋がっていきます」
「っ、すぅーーー、はぁーーー……はい」
ヌレールアだけにやらせるのではなく、ソウスケも隣で歩きながら、魔力の形を変形させ、そのまま維持させている。
指導依頼をされたことを考えれば、どのように訓練を行うのだと伝えるだけでも十分と言えば十分だが、心の底からヌレールアが強くなれる様に手伝いたいと思ったソウスケ。
同じく並んで同じことをするミレアナ。
ザハークに関しては……余波で周囲の地面が抉れたりしないように気を遣いながら、シャドーを行っていた。
(うん、良いね。魔力を放出しないように、なんとか留められている。気が抜けば消費しちゃうのは仕方ない。でも……やっぱり、魔法に関して伸ばさないのは惜しいと思うほど良いセンスを持ってる)
歩きながら、というのが今現在、少々ぽちゃっとしてしまっているヌレールアにはきつく、昼食時になる頃には、超汗だく状態になっていた。
「ヌレールア様、思いっきり食べたい気持ちは解りますが、なるべくヘルシーな物を……加えて、よく噛んでから飲み込みましょう」
「は、はい!」
一時、
暴飲暴食状態になっていたヌレールアとしては、耳が痛いアドバイス。
ソウスケは全く肉類などを用意しない訳ではなかったが、それでも事前に野菜をメインにした料理をと頼んでいた。
「これからたくさん動きはするので、極端な食事制限などはしません。ただ、バランスが良い食事を心がけ、よく噛んで食べる。そして夕食前には絶対に何かを食べないようにお願いします」
「分かりました!!」
ヌレールアが接近戦でも戦える戦闘スタイル目指すとなれば、訓練にそういった項目を加えるのは当たり前。
そうなれば、やはり体力は必要不可欠となる。
極端な食事制限をすれば逆効果であるのは、ダイエット知識がないソウスケでも解る。
「あの、ソウスケさんがこれまで体験した冒険を、聞いても良いですか」
食事中、ただ食べるだけなのも暇なため、ヌレールアはソウスケたちの冒険譚を尋ねた。
「構いませんよ。そうですね……まず最初は」
転移したダンジョンに関しては、色々と疑問を抱いてしまう為、冒険者と言う職業に就いた頃から話し始めた。
「す、凄いですね!!!!」
ソウスケの冒険譚は……基本的に、ソウスケたちの事を知らない者が聞けば「いやいや、さすがに盛り過ぎだろ」と
ツッコみたくなる。
心の中で、とんだ嘘つき野郎だと言われてもおかしくない。
ソウスケ自身、この世界の……冒険者の常識はもうある程度知っているため、そう思われるのも仕方ないと思っていた。
だが……既にソウスケに対して、完全な敬意を抱いているヌレールアは、全く疑うことなく受け入れ、ソウスケたちの活躍を賞賛した。
「ふふ、ありがとうございます。まぁ、良い事ばかりではありませんけどね」
「そうですね」
「あぁ、そうだな」
最終的には暗い話ではないため、これまでソウスケたちが絡まれてしまった、面倒な件についても話し始めた。
すると、話を聞き終えたヌレールアは血糖値が上がりそうだから抑えて、と言いたくなるほど怒りが顔に満ちていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます