千二十四話 空の旅
「っ……お前ら、マジでなんなんだよっ!!!!!!」
青年は色々と叫び散らかしたかった。
自分たちの邪魔をするなと、そして何故……ヴェノレイクの相手を、仲間の一人だけで相手させているのか。
「お前たちと同じ冒険者だ。別に友達じゃないし、ましてや知人でもないんだ。これ以上説明する必要はないだろ」
「ソウスケさんを相手に、真正面から吠えられる、か…………覚悟だけは決まっているということか」
「ッ!!!! 気に入らねぇ……気に入らねぇえええええ!!!! その上から目線を、止めろやッ!!!!!」
本当にソウスケたちと関りがない人物。
だからこそ……ソウスケだけは歳が近いという要因も相まって、上から目線な態度を取られることが気に食わない。
それはリーダーの青年だけではなく、他の敵討ちを狙っていた若いメンバーたちも同じだった。
「俺たちはギルドの方からヴェノレイクの討伐を頼まれたんだ。その点を考えれば、お前たちより対場が上だと言っても過言じゃないと思うんだが」
「ギルドからの依頼なんざ関係無ぇッ!!!!!!」
(私情で動いたら絶対に駄目だとは言わないし……なんなら俺だって、私情でギルドにランクアップはもうちょい待ってくださいって頼んできてたけど…………ん~~~~~、復讐に燃える人の相手は面倒だなぁ)
復讐に燃えたことがないからこそ、復讐を果たそうとする者たちの気持ちが解るなんて軽々しくは言えない。
自分たちの行動が、彼らの覚悟を無駄にする行為だということは解るが……それでも、ソウスケから視て……彼等の復讐が、敵討ち成功する未来が全く見えない。
「落ち着けって。冷静になって考えてみろよ。お前たちがヴェノレイクに挑んで……倒せたとしても、全員生きて帰られないんだぞ」
「んで、お前がそんな事決めつけるんだよ!!!!!」
「そりゃあ、ヴェノレイクぐらいのモンスターとは何度も戦ったことがあるし、それなりに多くの冒険者たちとも出会ってきたから……なぁ」
「だろうな。それより、相変わらずソウスケさんは優しいな。素直にお前たちのような気持ちだけが先走って、後の事を何も考えられてない若造は無駄死にするだけだと伝えれば良いだろう」
「ッ!!!!!!!!!!!」
(ちょ、ザハーク言い過ぎいいいいいいいい!!!! つか、俺だってまだ若造だから、あいつらに向かって若造とか正面から言える訳ないじゃん!!!!!)
この中では、ダンジョンで生まれたザハークが一番若造なのだが、今ソウスケにそれをツッコみを入れる余裕はなかった。
「気が短く、そしてやはり若いな」
「なっ!!! っ!!!!!?????」
飛び掛かった青年は自身の得物を抜くことはなく、全力で殴り掛かった。
大剣を抜かなかったのは……ほんの少しだけ理性が残っていたと言えるかもしれない。
ただ、本来であれば殴り掛かった青年はザハークにボコボコの粉々にされても文句は言えないのだが、ザハークはそこまではしなかった。
掴んだ手を……思いっきり青年ごと上空に放り投げるだけで、殴り潰したりなどはしなかった。
(うっ、わぁ…………何十メートル、とんだ???)
殺したり潰す気はない。
とはいえ、ザハークにも多少の苛立ちや怒りはある。
そのため、殴り掛かって来た青年を身体強化のスキルを発動し、思いっきり上に投げた。
(なっ、あっ!!!!????)
死にはしない。
頭から落ちたりしなければ、死ぬことはない。
青年はソウスケやザハークたちから視れば弱いだけで、世間一般的には強い部類に入る冒険者。
強化系のスキルを発動し、体を全力で魔力を纏えば、死ぬことはない。
「ぐっ!!!!!?????」
だが、しっかり体勢を立て直して両足から地面に着地できたとしても……激突した際の衝撃だけはどうしようも出来なかった。
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