千十六話 まだ序の口
(なんで、地面が目の前にあるんだよ)
自分が転んだという事に……転ばされたという事に直ぐには気付かなかったチャラ男。
「どうしたんですか? もしかして、もうギブアップですか?」
ソウスケはチャラ男が認識出来ない速さで動き、自分に双剣で斬り掛かろうとしたチャラ男の脚を引っかけた。
「ッ!!! ラッキーで調子に乗ってんじゃねぇぞ!!!!!」
「それじゃ、頑張って俺に傷を与えてくださいね」
チャラ男は自分が転ばされたのではなく、運悪く何かに躓いて転んでしまったのだと捉え、即座に立ち上がって再度斬り掛かる。
(今度は運だけじゃないってのを見せてやるか)
ラッキーだけだと認識されるのは癪である。
ソウスケはとりあえず男の攻撃をするすると避けて避けて避けまくる。
「逃げてんじゃ、ねぇッ!!!!」
(……なんでこういう人たちって、頭に血が上ると常識を忘れるんだろ。本当にこぅ……神秘的な謎? いや、神秘的って言うのは神秘という言葉に失礼か)
開始時から今まで……チャラ男は身体強化や魔力による強化などを使わずに動いていたが、動き続けて数分……全くソウスケに攻撃が当たらない、掠りもしないという事実を突き付けられた。
(ふ、ふざけんなよ……俺が、こんなガキに!!!!!)
恥などゴミ箱に投げ捨て、チャラ男は自身が有している肉体強化系スキルを発動。
加えて風の魔力を纏い、ついでに強化系のマジックアイテムも発動。
チャラ男の全開状態であり……Bランクのモンスターを倒せるとまではいかないが、それでもそれなりに戦れる超強化状態。
魔力の消費は半端ではないが、それでも世間一般的に強いという言葉に当てはまるだけの身体能力まで上がり、技術力も……不遜な態度を取るだけはあった。
そこにはソウスケも一応驚いていた。
(へぇ~~~、せいぜいCランクの中でも下位……もしくは中位ぐらいかと思ってたけど、この状態なら……多分、上位には当てはまりそうだな)
だが、ソウスケからすれば特別珍しい事ではない。
先日はBランクのエルフやその他のCランク冒険者たちと共にホワイトアントの巣を潰しに向かった。
その前はAランクのアンデット系モンスター、クリムゾンリビングナイトをソロで倒せる女性騎士と共に行動していた。
今更目の前で頑張って……焦りながらも懸命に双剣を振るうチャラ男程度にビビるなんてことは、まずあり得ない。
(……そろそろ良いかな)
「ぐっ!!!! いぎっ!?」
腹に殺傷能力をゼロにし、攻撃力を打撃に全振りした魔力弾を叩き込まれ、動きが止まったところで……チャラ男は自身の指に鈍い痛みを感じた。
(お、折れてやがる!!?? がっ!!!???)
右手の指が折れたと思ったら、今度は左手の指が折れ……チャラ男は自身の獲物である双剣を落してしまった。
「あらあら、もう降参ですか?」
「ふざ、けんな!!!!!」
これまでの冒険者生活で培ってきた根性はまだ健在であり、近づいてくるソウスケに前蹴りをぶちかまそうとするが、あっさりとスカる。
「ぐあっ!!!???」
そしてスカった足に、更に強い衝撃が……骨がバキバキに砕かれた。
脚全体が砕かれた訳ではないが、片足の骨がバキバキに砕かれた状態では、高速で動くのはほぼ不可能。
なぜなら……根性でどうにかする前に、まだ残っている手の指がどんどん砕かれていくから。
「い゛!? がっ、いぎっ!!?? っ!!!!!!!」
痛みが、我慢しようとしても直ぐに新たな痛みが迫る。
「っと、手の指は全部砕けましたね。もう片方の足の骨も砕けましたし……ふふ、どうやらもう戦えないのは確定みたいですね」
「ふ、ふざ……ふざけ」
まだソウスケに対する高圧的……もしくは生意気な態度だけは変えようとしない。
そのどうしようもない根性だけはある意味感嘆に値すると思いながらも……ソウスケはそこから罰を執行し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます