千十七話 抜いてしまおう

「吠えるのは得意みたいですけど、もうあなたは何も出来ませんよ。というわけで、あなたには罰を受けてもらいます」


「罰、だと!? クソふざけんなっ!!!???」


チャラ男の言葉を聞き終える前に、ソウスケは風の魔力で刃を生み出し……男の髪の毛を切断し始めた。


「な、なにしやがっ!!!??」


「もうあなたは俺に負けたんですから、大人しくしといてください」


反抗しようとするチャラ男の砕けた脚を踏みつけ、動きを制止させる。


「むっ……切るだけだとまた生えてくるよな……それじゃ、抜いてしまおうか」


「はっ!!!???」


チャラ男が驚く間もなく、ソウスケは圧壊のスキルを応用しながら、髪を何十本も……もしくは纏めて抜いていく。


(流石ソウスケさん。見事なコントロールです)


どんなスキルを使用しているのかある程度解っているミレアナは、周りの野次馬達が悲鳴……それか笑い声を上げる中、ただただソウスケの技術力の高さに感心していた。


「ぃよし……こんなところかな」


「…………」


髪の毛を殆ど抜き取られた時点で、チャラ男の中に反抗心は一切なくなっていた。

だが、ソウスケの次の一言で、僅かだけ反抗心が生まれた。


「んじゃ、次はまつ毛だな」


「えっ……いや、ちょちょちょま、待ってくれ!!」


「嫌だよ、待つわけないだろ」


今度は亜空間からピンセットを取り出し、まつ毛を抜き始めた。


躊躇なくピンセットでまつ毛を抜き取られ、僅かに芽生えた反抗心は即座に潰された。


「よしよしよし…………どうせなら、眉毛も全部抜いてしまうか」


「っ!! …………」


チャラ男は一瞬だけビクッと震えるも、何も口に出さず、ただ自分の毛を抜かれるのを受け入れるしかなかった。


何故なら……自身の周囲に十本以上の炎槍が展開されているのが見えたから。

再度拒もうものなら、本当に殺される。


ソウスケにそのつもりはなく、単にまた動かれるのが面倒だと感じたから脅しの為に展開しただけなのだが……チャラ男には効果てきめんであった。


「ふぅ~~~~、終わった終わった……うん、良いんじゃないかな。罰としては申し分ないね」


「…………」


ソウスケは平静を装いながらも……本当は爆笑を堪えるに必死だった。


(い、いやぁ~~~~。我ながら、中々恐ろしいことをしたな)


頭はほぼ禿げ。

そこまで抜き取るのはめんどくさい、っとソウスケが手を抜いたことによって、ぽつぽつと生えているのが……またダサい雰囲気を割り増ししている。


加えて、眉毛とまつ毛が抜けたことにより……ダサいだけではなく、怖さが増し増し状態となった。


「ついさっきまで、あんたが……あんた達が俺に何を言ってたか、忘れてはないよな?」


「は、はい」


元チャラ男だけではなく、ギルドのロビーにいた時は同じくソウスケをバカにする発言をしていた冒険者たちは一斉に頭を縦に振る。


「俺はソウスケ。Bランクの冒険者だ」


「っ!!!!!!!???????」


ソウスケは元チャラ男に自身のギルドカードを見せる。


そのカードには……間違いなく、Bランクという文字が記されていた。


「な、な、なななななん、で」


「なんで先にそれを言わなかったって? そりゃ決まってるじゃないですか。俺がこれを見せたところで、あんた達はとなりのエルフのお陰でお零れを貰ったカス、不正してランクを上げた屑野郎、金でランクを買った冒険者の恥さらし……みたいな事を言って、絶対に納得しないでしょう」


「そ、それ、は…………」


ギルドカードなど、ギルドが確認すれば一発で本物か偽物か解るものなのだが、仮にギルド職員が本物と認めたとしても、彼らがそれを言葉通り事実だと……受け止めるとは到底思えない。


そんなことはない、と言いかけた野次馬達は自分たちの言動を再度思い出し、ギリギリで飲み込む。


「だから、敢えてあなたをここに引きずり出したんです……それで何をしたかったと言うと、できれば今後俺にあぁいった関わり方はしないでください……あれ以上に怠く面倒な関わり方をされると、もっと潰したくなるので」


「「「「「「「っ!!!!!!」」」」」」」


殺したくなる、と言わなかったのはせめてもの慈悲だった。

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