七百三話 絵になる動き

「意外と直ぐに遭遇したな」


現在ソウスケたちがいる階層は三十二階層。


そしてソウスケとザハークの前の前ではミレアナがファイヤドレイクとバチバチに戦っていた。


(相変わらず綺麗に撃つよな……なんというか、戦ってる姿が凄い絵になる)


弓以外にも風や水魔法を使っているが、ソウスケ的には地を駆けながら弓を扱うミレアナがとても綺麗に見えた。


「ギィィィイイアアアアアアッ!!!!」


ファイヤドレイクとしては元々後ろのソウスケとザハークも殺して食べるつもりだったが、目の前に出てきたエルフが全力を尽くさなければ自分を殺す程の実力を持っている察し、今はミレアナだけに意識を割いていた。


ここでソウスケかザハークが後方から遠距離攻撃を放てば一発で決まるかもしれないが、そんなことをすればミレアナに怒られてしまう。


それが解っているからこそ、二人はミレアナとファイヤドレイクの戦いを観るだけで、絶対に手を出すつもりはない。


というより、観戦している間に他のモンスターたちが襲ってくるので、あまり援護する暇なんてなかった。


「ふぅ……少し時間を掛け過ぎたでしょうか」


なんて言葉を零すミレアナだが、ファイヤドレイクと戦っていた時間は約五分。

たったの五分。


勿論、強敵との戦いは神経を削るので、体感では何十分と戦っていたと感じるもの。

しかしミレアナにとってファイヤドレイクは確かに弱くはないが、それほど強いモンスターでもなかった。


なるべく体を消し飛ばしてしまわないように、徐々に弱らせてから脳天に矢をぶち込み、戦闘を終わらせた。


「お見事」


「見事な狩りだった」


「ありがとうございます……ソウスケさん、早速血の回収を行ってもよろしいでしょうか」


「おう、勿論だ」


ソウスケは亜空間の中から大きめのビンを取り出し、ミレアナはその中に水の魔力操作を使用して傷口からファイヤドレイクの血を抜き取り、入れていく。


(いや~~、本当にこの魔力操作にはいつも驚かされるよ)


本来であれば、モンスターの血抜きはもっと時間が掛かる。


だが、ミレアナの技術があれば数分程度で血抜きは終ってしまう。

そして血抜きが終わった後は、ソウスケとミレアナの二人で解体タイム。


ザハークは周囲を見張、二人に襲い掛かるモンスターの対応を行う。


(こういう時には、あまり強敵が現れないほしいものだ)


強敵との戦いは大好物だが、今はソウスケとミレアナを守らなければない。

そうなると、強敵との戦いに夢中になる訳にはいかないのだ。


(レッドゴーレムにフレイムリザード、レッドキャンサー……ふふ、こいつは良い。レッドキャンサーの身は美味いからな)


既にダンジョン内で実食し、その美味さは身を持って体験している。

戦いも好きだが、美味い飯を食べるのも好きなザハークにとって、身や肉が美味いモンスターは是非とも綺麗に仕留めたい。


レッドゴーレムやフレイムリザードは雑に、適当に仕留めるがレッドキャンサーだけは丁寧に仕留めた。


「うし、これで全部だな……また結構仕留めたな」


「ファイヤドレイクの残っている血の香りに惹かれたのではないか?」


「そうかもな」


ファイヤドレイクの解体が終わった頃、周辺には十体以上の死体が転がっていた。


それらをソウスケは全て亜空間の中に放り込み、最下層に向かって出発。

その日はもう一度Bランクか……もしくはそれ以上の強さを持つモンスターと遭遇することはなく、セーフティーポイントに到着。


熱々うまうまな夕食を食べ終えた後、ソウスケはエアーホッケーの制作……は、行わずに解体したファイヤドレイク以外の死体を解体し始めた。


一番慣れているソウスケは眠くなるまで延々と解体作業を続け、ミレアナとザハークは交代でソウスケの解体を手伝い続けた。

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