六百四十三話 いきなりそこ狙う?

「お、らぁああっ!!!!!」


「ッ!!!???」


全力で地面を蹴ってヒートミノタウロスに突進し、これから苛烈なバトルが始まる……と、ミレアナとザハークは同じ事を考えていた。


ソウスケはなんだかんだで強敵との戦いを楽しむところがある。


これから二分から三分はヒートミノタウロスと戦い続けるだろう……そう思っていたが、ソウスケの行動を見て二人共驚かされた。


「ブモォォォアアアアアアッ!!!!????」


なんと、ソウスケは地面を蹴る瞬間に強化系のスキル、身体強化と疾風を同時に発動した。


これによってヒートミノタウロスはソウスケの動きに反応することが出来ず、ソウスケの姿が一瞬にして視界から消えた。

そう思った瞬間、頭部二か所から尋常ではない痛みを感じ、頭を振り払う。


「へへ、とりあえずこれで大丈夫だな」


元の位置に戻ったソウスケの両手にはミノタウロスの角が二本、握られていた。


「ッ!!!!」


初っ端から自身の武器の一つを無理矢理取られ、一気に怒りのボルテージが高まるヒートミノタウロス。


(あれは……なるほど、高速治癒のスキル持ちでしたか)


ヒートミノタウロスは再生のスキルこそ持っていないが、高速治癒によって大抵の傷は直ぐに癒えてしまう。

だが、ソウスケが今行ったように体の一部を欠損させるような攻撃を食らった場合、元通りに角が復活することはない。


「ふ、ふふふ。少し、笑ってしまいますね」


「はっはっは! 同感だな」


二つのはヒートミノタウロスの立派な武器であり、象徴でもある。


その角があるからこそ、ミノタウロスだと一瞬で解る……そう認識している者もいる。

そんなミノタウロスの象徴である角を引き千切られ……禿ではないが、二人からすればそのように見えてもおかしくなかった。


二人が何故笑っているのかを察したソウスケも釣られて笑ってしまい、更にヒートミノタウロスを怒らせる結果となった。


「ブモォォァァァアアアアッ!!!!!」


手に持つ大斧に火の魔力を纏い、全力でソウスケを殺しに行く。

その一撃はジャイアントマグマゴーレムの鉄拳よりも鋭く、当たれば容易に体を斬り飛ばす。


しかし攻撃スピードがジャイアントマグマゴーレムより速くとも、ソウスケも無意識に強化系のスキルを同時発動してから、その二つを切らさずに使い続けている。


DランクやCランクのモンスターであればもう少し余裕を持って戦うところだが、相手はそこら辺のモンスターとは格が違うBランクのモンスター。


油断していると本当に痛い目を見る可能性がある。


「ふんッ!!!」


「ブっ!!??」


火の大斧による猛攻を掻い潜りながら懐に入り、水の魔力を纏ったボディーブローを決める。


良い一撃を貰ったヒートミノタウロスはそのまま五メートルほど後ろに飛ばされ膝を付くが、直ぐに起き上がって再びソウスケを真っ二つにしようと鬼の様な形相で襲い掛かる。


(骨を砕いた感触はあったんだけどな。さすが高速治癒のスキル持ちか……もう一体、高速治癒のスキルを持っている奴がいれば、蛇腹剣に食わせたいな)


魅力的なスキルを持っているモンスターは、是非とも蛇腹剣に食わせたい。

現状でも十分なチートだが、世の中にはチートな武器を持たずともチート級の力を持つ人物が存在する。


そんな人物と……ソウスケ的にはあまり好ましい流れではないが、ぶつかる日が来るかもしれない。

そういった万が一を考えれば、チート武器を更に成長させておきたい。


「ふ、ぬぁあああッ!!!!」


「ッ!?」



振り下ろされた大斧に対して水の魔力を纏ったグラディウスでガード。

そしてそのまま全力で押し返す。


まさか強化系のスキルも使い、全力で振り下ろした一撃を押し返される……なんてことは一ミリも考えていなかったヒートミノタウロスは戦闘中だというのに呆気にとられた表情をしていた。


「Bランクだからって、気を拭きすぎなんじゃないか」


極限まで纏う水の切れ味を増加させ、一瞬で背後に回って一閃。


「……やっぱり良い武器だよな、こいつ」


ヒートミノタウロスの全力の一撃を受けても刃こぼれしなかったグラディウスを見て、ソウスケは自然を笑みがこぼれた。

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