六百三十三話 敵がバカで助かった四人

三体のセンチネルが襲撃してきた後、三人は同業者たちの悲鳴を聞いた。


「……行くか」


「「了解」」


聞こえてしまったのはしょうがない。

三人は悲鳴が聞こえた方向へダッシュで向かった。


「おいおいおい……こりゃヤバいな」


悲鳴の元へ向かうと、そこには多数のソルジャーアントが冒険者を襲っていた。


(今がチャンスだな)


幸いにもソルジャーアントは冒険者を囲う様に襲っておらず、冒険者を嘗めているのか……数の暴力で潰す様な攻撃はしてない。


ソウスケが駆け出したタイミングとほぼ同じタイミングでミレアナとザハークも地面を蹴り、四人の冒険者を回収して大きく下がった。


突然現れたソウスケたちの存在に気付かず、速さにも反応することが出来ずにソルジャーアントたちは獲物を取り逃がしてしまった。


「えっ、へ!?」


「おい、生きてるか?」


「は、はい! 生きてます!!」


目の前にいたソルジャーアントが離れた場所にいる。

そして目の前の少年やエルフの美女やオーガ? に助けられた。


それを四人は即座に把握した。

即座に状況を把握した点はさすがプロと言えるだろう。


「問題無く走れるか」


「お、おう。そりゃ大丈夫だが」


「それなら今すぐ全力で走って逃げろ。こいつらは俺たちがなんとかする」


そう言いながら自分たちの獲物を奪ったと認識したソルジャーアントたちが、一斉にソウスケたちの方に向かって襲い掛かってくる。


だが、ソウスケたちは焦らずに全員が無詠唱で攻撃魔法を発動し、ソルジャーアントたちを蹴散らす。


「分かったら全力で逃げるんだ」


「わ、分かった!!」


これ以上は会話をする時間もソウスケたちにとっては無駄。

それを理解した四人は一斉に全速力で逃げだした。


「随分と物分かりの良い方達でしたね」


「こちらとしては有難い限りだ。ただ……なんぜこんなに大量のソルジャーアントがいる場所にあの四人はいたのか……」


彼らがバカではない。

それはなんとなく分かった。


だからこそ、何故あんな絶体絶命の状況に身を置いていたのか直ぐに答えが出なかった。


「……ソウスケ様、あそこに宝箱があります」


「ん? ……本当だ」


大量のソルジャーアントがいる中で、ミレアナは即座に例外である存在を発見。

ソウスケもその例外を確認した。


「つまり、あの四人の斥候は宝箱の解錠に失敗して、罠が発動してしまったってことか」


「その可能性はありそうですね。それか……宝箱の周りに罠が仕掛けられていたか」


「そっちの可能性もありそうだな。宝箱を目の前にして、警戒心が緩んでしまったといったところか」


ザハークの的確な言葉に対し、ソウスケはその気持ちが解らなくもなかった。


(その気持ちは解るな~~~。やっぱりこう……宝箱を目の前にしたら、ウキウキ気分になってしまうよな)


ソウスケの場合は仲間である二人が常時しっかりとしているので、そのような罠に引っ掛かることは滅多にない。


「それにしても…………本当に数が多いな」


「確かに超多いな。でも、全員馬鹿みたいに一直線で俺たちに襲ってくるし……ただただ大掃除してるだけって感じだよな」


「大掃除、ですか。その通りかもしれませんね」


ソルジャーアントのランクはCランク。

甲殻は固く、爪や牙は剣の様に鋭い。


しかしそんなソルジャーアントも三人の総攻撃を食らえばひとたまりもない。

ソウスケは風、ザハークは水、ミレアナは氷の矢や槍をどんどん放ち、そして的確に仕留めていく。


ソルジャーアントもセンチネルと同じくしぶとい生命力を持っているが、体に大きな穴が空けば十秒程度で命を落とす。


全て魔石を砕かずに仕留めるというのは不可能だが、それでもこのままソルジャーアントを倒し続ければ鍛冶や錬金術を趣味とするソウスケにとって良い戦利品となるのは間違いなかった。

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