六百二十五話 ルーキーは生き残れない
フルードがソウスケたち出会えずに不安がっている頃、ソウスケたちは中級者向けのダンジョンに潜っていた時以上の速度で階層を降りていた。
ダンジョンの地図は全てギルドで買っているので、地図を見ながら最短距離でまずは三十一層へと向かう。
「……上級者向けのダンジョンだけあって、一層から十層の間でもモンスターのレベルは高いな」
三人であればどれも一撃で倒せるモンスターばかりだが、それなりの戦闘経験を積んできたソウスケは鑑定で調べずとも、大体の力を把握出来る。
「私も初めて潜った時は同じことを思いました。確かに上級者向けダンジョンと呼ばれるだけはあると」
「だよな……やっぱり三つもダンジョンを管理しているこの街は贅沢だな」
上級者向けダンジョンでは一層からレベル十五以上のモンスターが徘徊している。
それ以下のレベルを持つ個体は存在しておらず、ルーキーが入ろうものなら何も出来ずに殺されてしまう。
(中級者向けダンジョンの上層に現れるモンスターはルーキーでも数があれば一体ぐらいは倒せそうだったと思うけど……このダンジョンに出現するモンスターと遭遇したら、一方的に蹂躙されそうだな)
レベルがそれなりに高いとはいえ、それでも知能が高くないモンスターなので指揮官が的確な命令を出せるのであれば話は変わってくる。
しかし、ルーキーがそこまで上手く立ち回るのは難しい。
それはギルドも解っているので、上級者向けダンジョンの入り口前には探索に向かう冒険者のギルドカードを把握する者が立っている。
本来であればソウスケたちのランクだと中に入る許可が降りないのだが、三人の実力がランクに当てはまらない事をギルドは把握しているので特例を出していた。
「まだ七階層なのにゴブリンリーダーまで出てくるのか……がっつり冒険者たちを殺しに来てるよな」
指揮のスキルを持っているゴブリンリーダーがいると、他のゴブリン達のコンビネーションがスムーズになる。
加えて、微量ではあるがリーダー以外のゴブリン達の身体能力が向上する。
(あと、普通のゴブリンもだけど大抵の奴らは何かしらの武器を持ってるよな……気を抜いてたらベテランでも怪我しそうだ)
そんな事を考えながら降り続け、三人は八階層のセーフティーポイントで休息をとることにした。
「ふふ、つまらなそうだな。ザハーク」
「……仕方ないだろ」
「そうだな」
相手が弱すぎるのでつまらない。
ザハークがそんな表情をするのは確かにいつものこと。
上層に出現するモンスターはどれもザハークが本気を出さずとも、一蹴り一殴りで終わってしまう。
「三十一階層に着くまでの我慢じゃないですか」
「それは解っているが…………ミレアナ、お前は退屈じゃないのか?」
ザハークから見れば、わりとミレアナも自分やソウスケ寄りの人間だと思っている。
「そもそも、今回はソウスケさんがターリアさんから受けた依頼を達成するために必要な素材を得る為に、上級者向けダンジョンに潜っているんです。初めから強い敵と戦えずとも、不満はありませんよ」
やるべき事をやる為にダンジョンに潜っている。
そこで強い敵と戦えずとも、特に不満はないと断言して焼きあがったフォレストタイガーの肉を食べる。
「……優等生というやつだな」
「褒め言葉として受け取っておきます。いずれ本当に強いモンスターと戦えるのですから、イライラしても仕方ありませんよ。今回は素材の回収が終われば地上に戻りますが、いずれは最下層まで行くのですから。そうですよね、ソウスケさん」
「あぁ、勿論最下層まで潜るつもりだ。せっかく階層が深いダンジョンがあるんだ……一番下まで降りないと損だろ」
ダンジョンの下層を探索するのは当たり前。
そんな会話をしているソウスケたちに訝しげな視線を向ける者たちがいた。
モンスターに襲われないセーフティーポイントなので、ソウスケたち以外にも冒険者は存在する。
本来なら生意気な会話をしていると思われるところだが、ソウスケたちの噂が頭に入っているので馬鹿なルーキーの様に自ら絡みに行こうとする愚か者はこの場にいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます