五百九十二話 出会った当初から強かった
「ミレアナさん、交代の時間です」
「……分かりました」
ミレアナが結界を張れば一階層のモンスターが破って襲い掛かって来ることはないのだが、今回はバータたちの教育がメイン。
一般的な寝袋に入って仮眠を取り、最初に見張りを始めたバータとフィーネと交代。
ミレアナとクレアラは二人とも水魔法が使えるので顔を洗って目を覚まし、太陽が昇るまで見張りを行う。
「よ、夜は夜で怖さがありますね」
「夜行性のモンスターというのもいますしね。一説によれば、夜行性のモンスターは他のモンスターと比べて凶暴らしいですよ」
「ッ!! だ、だから夜は安易に行動してはならないんですね」
この説はあながち間違ってはおらず、夜でも活動するモンスターは夜になれば血が騒ぎ、闘争心が昼間と比べて湧き上がる。
モンスターの多くは夜目のスキルを習得しておらずとも、暗闇の中で自由に動ける。
夜の森や草原は感知能力に優れた者でなければ、対峙したモンスターの姿を見失うのも珍しくない。
「……えっと、ミレアナさんはその……どうやってソウスケさんというパーティーメンバーの方と出会ったんですか?」
ただただ興味本位で尋ねた。
ミレアナというエルフの(ハイ・エルフ)中でも跳び抜けた美しさとスタイルの良さ、そして圧倒的な強さを兼ね備えた者とソウスケという人物はどのようにして出会ったのか。
ソウスケという名前を聞いたとき、とある話をクレアラは思い出した。
全てを兼ね備えたであろう女性エルフと通常のオーガとは違う種類のオーガと一緒にダンジョンを探索する、二人とは到底釣り合っていない少年。
話だけを聞けば、ミレアナと一緒に行動するような冒険者とは思えない。
しかし、実際に一緒に行動している本人から話を聞くと、そんな噂は全くの嘘。
一ミリも合っていないと断言された。
「……私は、ソウスケさんと出会った当初は事情があり、自分の力を存分に振るえない状態でした」
奴隷だったという過去は伏せ、何故ソウスケと一緒に行動しているのかを話し始める。
「事情があり、生まれ育った里に帰る力もない。そんな時に出会ったのがソウスケさんでした」
「つまり、ソウスケさんが危機的状況から助けてくれた、ということですか?」
「その通りです」
ミレアナはソウスケが奴隷館にやって来るタイミングが遅れていたら、貴族の令息に買われていた可能性が高かった。
その令息がゴミみたいな性格をしていたのか否か、それはミレアナには分からない。
ただ、ソウスケと出会ってからの様な楽しい生活が送れなかったことだけは断言できる。
「ソウスケさんが私やザハークと一緒に行動しているからおこぼれで経験値を貰い、強くなっている養殖だと勘違いしてる者もいるようですが、ソウスケさんは私と出会う前から超強い人です」
「その、いったいどれぐらい強かったんですか?」
「Bランクモンスターのコボルトキングをソロで倒す程の強さを持っていました」
「ッ!!??」
全く予想していなかった強さの基準を聞き、まだ完全に眠りに入っていなかったバータやフィーネも体が震えるほど驚いた。
「そ、それは……ほ、本当、ですか?」
「嘘ではありませんよ。私は取り巻きの上位種を相手していましたが、ソウスケさんは一人でコボルトキングを相手に戦っていました……私の感覚ですが、あの時は全力で戦ていませんでした」
「……えっと、ソウスケさんは人族、なんですよね?」
「えぇ、人族ですよ。まぁ、他の人族と比べて歳のわりには強過ぎるということは分かっています。本人もそれは自覚していますよ」
ただ、ミレアナとザハークも一緒に行動しているメンバーが跳び抜けすぎているので、仮に他のパーティーから「今のパーティーを抜けてうちのパーティーに入らないかい?」と誘われても、そもそも入る気はないが他のパーティーに所属する人間に全く魅力を感じられない。
「実力を見た目で判断してはならない。この言葉が最も似合う人物と言っても過言ではありません」
この教訓を受けていないメンバーが何人もソウスケに……ではなく、ミレアナやザハークによって退けられた。
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