五百八十話 自由に使ってくれ

「そういえばソウスケさんは商人ギルドから依頼がたくさん届いてるのだったな」


「そうなんだよ……それを造る為にも、途中でダンジョンに潜った方が良さそうだな」


「素材集めのためか」


「そうだな。素材集め……というより、魔石集めだな」


魔石集めと聞いたザハークの目がキラリと光る。


「つまり、あまりモンスターの素材を気にせず倒しまくれば良いということだな」


「ま、まぁその通りだな。というかザハーク、別にその作業に関しては付いて来なくても良いぞ」


「むっ、そうか? ……いや、しかし俺一人では鍛冶ギルドの鍛冶場を借りれないと思うのだが」


「あっ……そうか。それもそうだな」


いかにザハークの見た目が鬼人族に似ていても、従魔だけが鍛冶場を借りることは出来ない。


「ソウスケさん、私も魔石集めを行った方がよろしいでしょうか」


基本的にダンジョンに潜る日の方が多いので、ミレアナの実力なら多数のモンスターが襲ってきても対処可能。

プレート一枚分の魔石を集めるなど、ミレアナにとっては造作もない。


ただ、ソウスケとしてはミレアナに自分の時間を自由に使って欲しい。


「いや、ミレアナは好きなように自分の時間を使ってくれ」


「……分かりました」


ソウスケに言われた通り、自由に使おうと決めた。

しかしダンジョンで倒したモンスターの素材が全て錬金術に使えるわけではないので、結果的に使わなかった魔石や素材はソウスケに渡すことになる。


数日ぶりに一緒に夕食を食べた翌日、ミレアナはソウスケが起きるよりも朝早く出発し、冒険者ギルドに寄って一つ依頼を受けてから上級者向けのダンジョンへと向かった。


上級者向けダンジョンの入り口も他のダンジョンと同じく大変賑わっているが、ダンジョンに潜ろうとしている冒険者のレベルは中級者向けダンジョンと比べて一段階上がっていた。


大勢の冒険者が行き来する中、一人の冒険者がダンジョンの入り口に向かった。

ミレアナが視界に入った冒険者たちは一目で強者だと見抜き、パーティーの人数が足りない冒険者たちは即座に誘おうとした。


しかしミレアナもさすがに慣れ始め、冷気を全開にしながら入口に向かうことで自分を誘おうとする冒険者たちを牽制。


ミレアナから発せられる冷気と拒絶するようなオーラを感じた冒険者は一歩後退る。

それでも声を掛けようか否かを迷っていると、その間にミレアナは一人でダンジョンに入ってしまった。


「お、おっかないエルフの姉ちゃんだったな」


「そ、そうね。私たちなにか悪いことしたかしら?」


中級者向けダンジョン内で起きた件を全く知らない者たちは、何故あそこまでミレアナの機嫌が悪いのか分らなかった。


そして上級者向けダンジョンに一人で潜ろうとしているミレアナを一瞬心配した者は多かったが、直ぐにその考えを振り払った。


冷気を放つ前でも強者のオーラが漏れていたが、冷気を放つことでより明確に周囲の同業者に力量を伝えてしまった。


「どの階層に転移するのか知らねぇけど、あの姉ちゃんなら一人でも問題無さそうだな」


本日初めて上級者向けダンジョンに潜るのだが、同業者たちの予想通り……ミレアナは難無く階層を下っていた。


「さすが上級者向けのダンジョンといったところですね」


一層から出現するモンスターの最低レベルが十五。

とてもルーキーたちが潜れるような階層ではない。


「現れるゴブリン全てが何かしらの武器を持っている……上位種でないにも関わらず、剣術などのスキルを持っているのも驚きですね」


洞窟を進むと多くの低ランクモンスターがミレアナを襲う。

中には体に魔力を纏い、身体強化を使って襲い掛かる個体もいるので、意外と油断ならない。


「ですが、これぐらいであれば全く問題はありませんね」


跳んで襲い掛かる複数のホーンラビットの頭を的確に狙って短剣を刺し、絶命させていく。

倒し終えたら一先ず魔石だけは先に剥ぎ取り、血抜きを終えれば収納袋にしまう。


階層は初心者、中級者向けのダンジョンと比べてやや広いが、ギルドからダンジョン内の地図を買ったミレアナは迷うことなくサクサクと進んでいく。


新作、スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす、の投稿を始めました。

是非読んでみてください

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