五百八十一話 レアモンスター
ミレアナが上級者向けダンジョンに入ってから半日ほどが経過し、現在三回層を探索していた。
一層一層が広いとはいえ、ミレアナにはギルドが冒険者に売っている地図がある。
なので、次の階層まで迷うことはない。
そして最短距離で進む道にモンスターがいようと、関係無しに進んでいく。
「……他のダンジョンに現れるモンスターと比べて、やや戦意……いや、殺気が強いような気がしますが……気のせいでしょうか?」
鑑定で調べれば低ランクなモンスターであるにも関わらず、威圧のスキルを持っているのではと思ってしまうほど、襲い掛かって来るモンスターの殺気が強い。
(これでは自分の居場所を自らバラしている様なものですが……この辺りの階層に生息するモンスターは気配を消して奇襲しようという考えがないのかもしれませんね)
侵入者である冒険者の気配を察知すれば、迷いなく殺しに掛かる。
少々ミレアナが殺気を放て脅かしても怯むことなく襲い掛かった。
ただ、所詮は低ランクモンスター。そしてミレアナにとっては低レベル。
運動相手にもならない。
魔石を第一に回収し、使える……もしくは食べられる部分があれば剥ぎ取ってその日の夕食に回す。
結局初日は四回層の途中で休息をとることになり、意外にも夕食の食材は集まった。
セーフティーポイントではなく、ただの通路で風の結界を張って食事と風呂。
そして睡眠を済ませる。
どう考えても無謀な行為だが、この階層でミレアナの結界を破れるモンスターはいない。
というわけなので、ゆっくり夕食を食べていても、のんびり風呂に入っていても焦る必要ない。
ミレアナの結界であれば中層までいっても重ねて張ればなんとかなる。
ただ、朝起きてから結界を解除した時、風に切り裂かれたモンスターの死体が転がっている。
「……慣れてはいますが、朝からこの光景を見せられるのは少々億劫ですね」
一定時間が経てばモンスターの死体はダンジョンに吸収されるが、運悪く結界の周囲に死体が転がっていた。
しかしそこは冒険者。とりあえず魔石だけはササっと回収してしまう。
「さて、今日も元気に降りましょう」
地図を広げながら着々と本日も探索を進めていく中、一階層から十階層までの間では中々見られないモンスターがミレアナの前に現れた。
「ワームですか……この階層だと、レアモンスターになる個体ですね」
巨大なミミズのモンスター、ワーム。
ランクはD。体が長く、その丸い口は余裕で人を食べ……飲み込んでしまう。
地面や壁など関係無く移動するので、ダメージを与えても逃げられることが多い。
ただ、一階層から十階層に現れるワームは……何故か他のワームと比べて肉が旨い。
それを冒険者ギルドも分かっているので、高値で取引される。
「サクッと仕留めましょう」
その情報はミレアナを頭に入っているので、魔力感知で魔石の位置を即座に特定。
身体強化のスキルを使用して華麗なステップでワームの咬みつきや体当たりを回避。
「ここね」
風の魔力を筒状にして押し込む。
「ッ!!!!」
攻撃をされれば勿論痛みを感じる。
だが、今食らった痛みは自身の命に直結する痛い。
そう感じたワームは急いで地面に潜ろうとするが、切り取った部分を掌で押すとすっぽり魔石が入っている部分が抜かれた。
「ッ……」
「やはりこの倒し方は良いですね。あまりモンスターを傷付けたくない時に使える」
一気に血抜きを行い、用意していたビンに入る分の血は売れるので回収し、残りは地面に放置。
「しかし……大きいですね」
全長十メートルはあるので、それなりの腕を持つミレアナでも全て解体するのに少々時間がかかる。
そんな状況を他のモンスターが見逃すわけないのだが……いくら本気で殺そうとしても、この階層にミレアナの運動相手になるモンスターはいない。
「ふぅ、結構時間が掛かってしまいましたね。それで他の死体は……魔石だけ取ってしまいましょう」
本日の肉はワームの肉があれば十分なので、解体中のミレアナを狙ったモンスターの中には食べられる個体もいたが、魔石を抜かれた死体はダンジョンに吸収されてしまった。
ワームの肉は中々腐りにくく、ミレアナは朝昼晩……地上に戻るまでワームの肉を食べ続けた。
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