五百七十一話 一人ならもしかしたら……
「さて、気合入れていきましょう」
ソウスケとは別行動を取ると決めた翌日、ソウスケよりも早く起きたミレアナは一人で朝食を食べ、一人で中級者向けのダンジョンへと向かった。
相変わらずダンジョンの入り口に辿り着くまで多くの視線がミレアナに集中する。
しかしそんな視線に気を取られることはなく、速足でダンジョンの入口へと向かう。
「いつもより早く起きたと思いましたが、ここはいつも人が多いですね」
ダンジョンの入り口前。
そこには自分をパーティーに売り込む者、足りない人材を声に出しながら適当な人材を探しているパーティー。
ダンジョンに入る前に必要な道具を売っている商人たち。
冒険者ギルドの入り口前と同じぐらい賑わっていると言っても過言ではないだろう。
「お、おい! あれってもしかして」
「マジか、今日は一人なのか……」
「声をかければ、もしかしたら」
ダンジョンの入り口前に立っている冒険者たちはミレアナの存在を知っている者が多かった。
いつもは見た目が鬼人族に近いオーガの従魔と成人しているのかしていないのか、分かりづらい冒険者と一緒に行動している。
しかし今日はなんと一人でダンジョンにやって来た。
かなりの強さを持っているのではと噂されているミレアナだが、ダンジョンに一人で入るのは危険。
それは冒険者なら知っていて当たり前の常識。
よっぽど適正レベルとの差があるなら話は別だが、ミレアナが潜ろうとしているダンジョンは中級者向けのダンジョン。
Bランクの冒険者であっても、ソロで潜ろうとしないのが当たり前。
そんなダンジョンに一人で潜ろうとしてる。
圧倒的な美しさを持つエルフの美女を一人でダンジョンに潜らせる訳にはいかない!!! ……なんて思いは建前であり、本音はミレアナの様な超絶美女と一緒に行動したいだけ。
だが、そういった下心満載の冒険者が自分に近寄ってくる冒険者が多いのは知っている。
(本当に……学習しない人たちですね)
冷気と戦意を零し、私の近寄るな……一人で十分だという考えを周囲に知らしめた。
「ッ!!!」
「や、やっぱり止めておこうか」
「そ、そうだな……俺たちじゃ、力不足かもしれないし」
自分で言っておいて悲しくなるが、それは紛れもない事実だった。
例えCランクの冒険者であっても、目的を持つミレアナからすれば足手まといという認識を持たれる。
ガチな表情に変わったミレアナに近づく者がゼロとなり、いきなりニ十階層へ転移した。
「目指すは三十階層のボス。気負い過ぎないように行きましょう」
地図は既にソウスケから受け取っているので、下に降りる階層まで迷うことはない。
そもそも降りるのは二度目なので、だいたいの道筋は頭の中に入っている。
身体強化は使わず、素の脚力で森の中を駆け抜けていく。
目標は最下層のボスである複数のトレントとエルダートレントを一人で倒すこと。
ソウスケからランク五の魔法袋を受け取っているので、倒したモンスターはそれなりに回収出来る。
「「「キキッ!!!」」」
「早速お出ましですか」
ニ十分ほど走り続けると、ようやくモンスターと遭遇。
ミレアナに狙いを付けたモンスターはフォレストモンキー、三体。
森の中を巧みに動くサルだが、現在は冷気と戦意を零していないミレアナの実力には気付けておらず、無謀にも狩りの対象に選んでしまった。
「……弓を使うまでもありませんね」
ミレアナの得意武器は弓だが、体術も侮れない武器。
フォレストモンキーたちは無知ゆえに、身体強化のみを使用してミレアナに素手で襲い掛かった。
(身体強化を使わずとも対処可能ですね)
魔力回復のポーションも魔法袋の中には入っているが、なるべく魔力を消費しないことに越したことはない。
「ふっ、やっ、はっ!」
軽快のステップから蹴りを放ち、二体のフォレストモンキーが反応する前に首の骨をボキっと負った。
最後の一体だけは辛うじて蹴りに反応することが出来たが、ガードした左腕ごと骨を折られてノックアウト。
「フォレストモンキーですと運動相手にすらなりませんね」
瞬殺した後は周囲を警戒しながら一先ず魔石と骨の剥ぎ取りを行った。
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