五百七十話 よく考えると扱いが難しい

二人は鍛冶ギルドに入ってから鍛冶場を借りる申請を行い、早速鍛冶を始める。


二人同時に鍛冶を行うので、借りる鍛冶場の使用金額は割高になる。

受付嬢は二人が料金を払えるのか少々心配していたが、それは杞憂に終わった。


「さて、早速造るか」


「まずは何を造るんだ?」


「さっき思い付いた槍だ。ザハークは何を造るんだ?」


「俺はまず肩慣らしにロングソードだな」


必要な材料を亜空間から取り出し、二人は超集中モードに入る。

ソウスケは初めて造る武器であっても、イメージ通りに造りたい。

そんな思いを持ちながらモンスターの素材と鉱石の形を変えていく。


ザハークもそこまで高品質の素材を使わないとはいえ、しょうもない低品質の武器を造るつもりは一切ない。

故に、一本のロングソードを造るにのにも凄い集中力を使う。


「……ふぅーーーーー、こんなところか」


刃が二つに別れ、間で敵の刃を受け止めて破壊できる槍が完成。

元から失敗作を造るつもりはなかったが、失敗する可能性がゼロではないので、素材は低ランクの物を使用していた。


それでもランクは二。決して鈍らではない。


「上手くいったか?」


「一応な。切れ味上昇も付いている。効果はあまり高くないが、それでも使った素材を考えると駄作ではない。そっちはどうだ」


「及第点、といったところだ。やはり鍛冶をしない期間ができると腕が鈍るな」


「それは仕方ないことだ」


ザハークが造り上げたロングソードもランクは二。

使用した素材を考えれば良作と言いえるだろう。


だが、ザハークとしては及第点としか言えない出来だった。


「それにしても、面白い武器を造ったな」


「だろ。この間で剣の刃を挟んでバキって折るんだ。挟んだ刃を折るために刃を少々太くしてあるから、扱うのにはそれなりに腕力が必要だけどな」


「なるほど……別れた刃の間に相手の刃を入れるという技術を考えれば、少し素人には扱いにくいかもしれないな」


「……言われてみればそうだな」


単純にこんな武器を造ってみたいと思い、造っただけなのでそこまでは考えていなかった。


「どう考えても玄人向けの武器だな……まっ、使ってみたいって奴もいるだろ。おそらく。さっ、次だ次」


次は獣系のモンスターの牙や爪をメインに使用し、使い捨ての手裏剣を造り始めた。

使い捨ての武器ではあるが、これも集中力を切らさずに造っていく。


「よし、これぐらいでいいか」


造った数は合計で十個。

半分は錬金術で造っているので、刃が別れた槍よりも短時間で作り終えた。


「さて……暑くなってきたな」


自身の周囲に冷気の霧を纏い、熱くなった体を冷やす。

三十分後、ザハークが手斧を造り終えたのでザハークにも冷気の霧を纏わせる。


「お~~~、有難い。暑さには強いつもりだが、やはりこうして涼めるのは良いな」


外よりも断然熱いので、魔力の消費量が多くなるがソウスケには微々たる差。

少しの間冷気の霧で涼み、そして再び鍛冶を再開。


「…………よし、こんなところか。あっ、もう六時か」


鍛冶場に置かれている時計を見ると、短針は六時を指していた。

途中で昼食を挟んだが、モンスターとの戦いよりも集中力を使用した二人の腹は大きな音が出てしまう減っていた。


「ふむ、良い出来だな」


「終わったか。ザハーク、そろそろ飯食べにいかないか」


「そうだな。鍛冶に集中していたら腹が減った」


二人は造り終えた武器を亜空間の中にしまい、一旦宿へと戻ったがミレアナの姿はなかった。


「ダンジョン内を楽しく探索してるみたいだな。んじゃ、俺たち二人で食べに行くか」


「あぁ、そうしよう。今日はがっつり食べたい気分だ」


いつもがっつり食べているが、今日は殆ど鍛冶に集中していたので更に腹が減っていた。


(こりゃ当分食費の金額が増えそうだな)


間違いなく今日は普段よりもザハークは夕食を食べる。

しかしそれは事前に分かっていた事なので、特に焦ることはない。


夕食を食べる店もそれなりに美味いというランクの酒場なので、ザハークは普段より多く食べたとしても、ソウスケの懐にダメージを与えることはない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る