五百七十二話 念のため結界を展開
「……今日はこれぐらいにしましょう」
一日で三回層ほど降りたミレアナはセーフティーポイントに無事到着。
そこには他の冒険者もおり、突然現れたミレアナの姿に見惚れる者が多くいた。
しかしミレアナはそんな状況に気を取られることはなく、早速夕食の準備を始めた。
今日の間に倒したモンスターの肉を魔法袋から取り出し、香辛料などを使いながら味付けをしていく。
その間に道中で見つけた食べられる果実をカットしていき、せっせとダンジョン内にしては豪華な夕食が作られていく。
「お、おい。あれって香辛料だよな」
「あぁ、そうだな。しかも超新鮮そうな果実まで……う、羨ましい」
ダンジョン内で実っているか実は運が良ければ害を受けることなくゲットできるが、大抵の場合はその果実を狙っているモンスターが近くに生息しており、実に近づく者に襲い掛かる。
故に、モンスターとの戦闘を避けたい冒険者たちは目先に果実があっても、取ろうとしない。
しかしそんなことはハイ・エルフのミレアナには関係無い。
襲い掛かるモンスターをあっさりと仕留め、さらっと果実を回収。
果実だけではなくモンスターの素材や魔石も手に入り、一石二鳥。
ミレアナとしては、何故モンスターを倒してでも果実を得ようとしないのか謎だった。
「さて、お腹を満たしましょう」
上手に焼いた肉を皿に移し、食べやすいサイズにカットしてからいざ実食。
「……いつも通りの味ですね」
そんな感想が口から漏れた。
そしてそれを聞いていた同業者は驚愕のあまり、目が点になっていた。
ついさっき夕食を食べたのに、ミレアナが作った料理の匂いに食欲をそそられ、再びお腹が鳴りだした。
だが、そんな周囲の冒険者たちの事情など知らず、ミレアナは食事を進める。
皿はあっという間に空になり、食べ終わってしまった。
「あっ」
同じセーフティーポイントで過ごしている冒険者たちは、ただただミレアナが夕食を食べてるところを見るだけで、結局声を掛けることは出来なかった。
夕食を食べ終えたミレアナは本日使用した短剣などの刃を研ぎ、風の結界を重ねて張る。
そして結界内で魔法袋の中からソウスケが造った簡易的な風呂を取り出し、お湯を投入。
のんびりとダンジョン内での入浴タイムを楽しみ、その他諸々が終わったミレアナは使用者の疲労を癒す効果が付いた寝袋に入り、睡眠に入った。
セーフティーポイントなので、モンスターは襲い掛かって来ない。
だが、同じ冒険者は話が別。
二十三階層まで一人で潜ってくるという点を考えれば、いかにミレアナの実力が桁外れなのか解る。
解る筈なのだが、一線を超えようとするおバカさんはそういったことを冷静に考えられない。
なので、ミレアナは入ってきたら殺すという意味も込めて、触れた相手を斬り裂く風の結界を重ね掛けして展開した。
これにより、仮に……万が一ミレアナを襲うと思った冒険者が実行しても、ミレアナが目を覚まして攻撃態勢に入るまでの時間は稼げる。
「……おそらく、朝ですね」
結局ミレアナを襲うなどと考える馬鹿はおらず、風の結界は無事。
約八時間後に起床。
起きたミレアナは顔を洗い、風の結界を消さないまま朝食の準備を始めた。
先日の夕食と同じ様な食事を作り、腹を満たす。
量は夕食時と比べて控えめであったので、直ぐに食べ終えて結界を解除。
「少し早いかもしれませんが……問題ありませんね」
まだ完全に朝を迎えていない。
だが、そこは気にせず下に降りていく。
準備万端なミレアナは軽く屈伸運動を行い、再び最下層に向かって走り出した。
「あっ……本当にソロで探索してるんだ」
風の結界が消え、ミレアナが姿を現した。
先日は声を掛けるタイミング全くなかったが、結界が消えて出てきたら声を掛けようと思っていたパーティーがいくつもあった。
ソロでダンジョン内を探索するのは危ない。だから一緒に行動しないか?
ありふれた誘い文句だが、決して言葉の内容は間違っていない。
だが、そんな誘いを受ける前にミレアナは二十四階層に繋がる階段を探し始めた。
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