五百三十七話 持久力は優れていたが……
「流石歳を取ったエルダートレントだな……攻撃魔法の威力が高い」
鋭い複数の枝による攻撃だけではなく、当然木や風の攻撃魔法を遠慮なくぶっ放すエルダートレント。
魔力量が他のモンスターと比べて圧倒的に多いので、連続で威力が高い魔法を放っても問題無い……のだが、目の前の人間は全て同じ魔法で相殺している。
「これだけ攻撃が止まらなかったら、被弾覚悟で突っ込んで倒すって方法を取らざるを得なくなりそうだな」
なんて言いながらも、一歩ずつエルダートレントとの距離を詰めていく。
エルダートレントとの魔力量は驚異的だが、ソウスケの魔力量も他人からは底無しに思われるほど多い。
最初は勝てるだろう……純粋にそう思って攻撃していたエルダートレントだが、徐々に後ろに下がり始めていた。
ただ、自分が目の前の冒険者に怯えているという自覚はなく、敵を倒す為に攻撃を続けていく。
「これだけ攻撃魔法が使えて、拘束系の魔法も使える……本当に三十階層に相応しいボスモンスターか? 他にトレントが十体近くいたし……四十階層辺りのボスでもおかしくないと思うんだけどな」
ソウスケと同じ考えを持つ冒険者は多く、実は中級者向けのダンジョンをメインに活動する冒険者たちの中で、最下層のエルダートレントに挑もうとするパーティーは少ない。
トレントやエルダートレントの素材は杖の材料として使える物なので、常にクエストボードに依頼書が張り出されるぐらいに需要がある。
しかし、倒すのにそれなりの戦力と準備が必要になるので、上級者向けのダンジョンの中層辺移行を探索する冒険者でなければ、余裕を持って挑もうとは思わない。
「さて……そろそろ距離も縮まってきたし、強引に言っても問題無いよな」
距離は五メートルほどまで縮まり、大丈夫だと思ったソウスケは強引に嵐の様に飛んで来る攻撃を潜り抜けていく。
「ッ!!!!」
近づかれる、殺される。
本能的にそう思ったエルダートレントは木のシェルターを生み出し、その上に風のバリアを何重にも重ねて防御態勢に入った。
「おいおい、いくらなんでも厳重過ぎじゃないか?」
突破するのは容易では無い、それなりの貫通力が必要。
瞬時に判断したソウスケは右手に風と雷の魔力を纏い、全力で回転させた。
そして思いっきり突きを放ち、螺旋回転した風雷の弾丸を何度も飛ばす。
すると、いとも簡単に風のバリアと木のシェルターは破壊された。
「行けそうだな」
注意が完全に前方に逸れたことを確認し、背後に回ったソウスケは爪撃、ブレイククロウに風と雷の魔力を混ぜ、背後を丸裸にする。
「これで、終わりだな」
丸裸になった瞬間を狙い、グサッとエルダートレントの体を抉り、綺麗に魔石を抜き取った」
「ッ、…………」
「第二の心臓と呼ばれてるだけあって、抜き取ったら直ぐに動かなくなったな」
発動していた風のバリアと木のシェルターも崩れ落ち、動かなくなったエルダートレントの死体だけが残った。
「お疲れ様です、ソウスケさん」
「おう、そっちもお疲れ……って言うほどお互いに動いてないよな」
ボス戦だから時間が掛かるという訳ではなく、スパッと終わる時はスパッと終わる。
だが、今回の相手は周囲の木々から養分を吸収することで再生、そして魔力の回復が行える持久力に優れているモンスター。
比較的討伐するのに時間が掛かるモンスターなのだが、ソウスケたちは結局三分足らずで戦いを終わらせた。
なので、三人共あまり仕事をしたという感覚が無かった。
しかしこれ以上モンスターが現れることはないので、ここでボス戦は終了。
宝箱も三人の前の前に現れた。
「さて、ボス戦もいつも通り無事に終わったことだし、地上に戻ろう」
トレントやエルダートレント、宝箱をきっちり回収し、夕食を食べ終えたソウスケは何だかんだで疲れが溜まっており、あっさりと睡魔にやられてしまった。
そして中級者向けダンジョンを攻略した後日、ダイアスと約束していた通り、臨時教師としての依頼を受ける為にギルドへと向かった。
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