五百三十六話 その弱点を突けば良い
一時間程が経ち、ソウスケたちの前にいた冒険者たちが全てボス部屋の中に入り、中から消えた。
「行くか」
中の冒険者たちが完全に消えたことを確認した三人はボス部屋の中へと入る。
「森……いや、林か」
ボス部屋の中は洞窟タイプではなく、木々がそれに生えており、空間もある程度の広さを持っていた。
「エルダートレント、ですね」
「周囲には多数のトレント……てか、やっぱり普通のエルダートレントとは違うんだな」
ボス部屋の中に君臨するモンスター、エルダートレントの設定は生まればかりではなく、五十年は生きたという設定。
トレントやエルダートレントは生きている年数が長くなればなるほど、魔力量や攻撃魔法の種類が増える。
「三十層のボスにしてはそれなりに強いよな」
喋っている間にも手下のトレントが鋭い枝で攻撃を加えて来るが、全て魔力の斬撃で弾き飛ばしている。
「かもしれませんね。ですが、火に弱いことに変わりありません。それを考えれば、弱点を突きやすいモンスターなので、倒しやすいのでしょう」
「それもそうか……それで、だれがエルダートレントと戦う?」
強敵との戦いであれば、真っ先にザハークが希望する。
Bランクのエルダートレントは勿論強敵に部類される。
てっきり今回もザハークはエルダートレントとの戦いを希望するのかとソウスケは思っていたが、予想が外れる。
「俺は遠慮する」
「エルダートレントはそれなりに強敵だと思うけど……それでも良いのか?」
「強敵かもしれないが、俺が戦いたいと思うタイプのモンスターではない」
「なるほど、確かにそうだったな……でも倒そうと思えば倒せるだろ」
ザハークは肉弾戦を好む。
故に、人型のモンスターとの戦いは率先して参加したがるが、トレントの様なモンスターが相手では、若干だが闘争心が萎える。
「ソウスケさんが戦えと言うならば勿論戦うが、どうする?」
正直、戦っても戦うわなくても構わない。それがザハークの本音だった。
エルダートレントの様な相手と戦うのに慣れるのもありだとは思っている。
ただ、久しぶりに強敵との戦い。
ソウスケは一人だけで戦おうと決めた。
「いや、それなら今回は俺が戦うよ。二人には周りのトレントを任せても良いか?」
「了解しました。ザハーク、簡単に出来るとは思いますが、魔石を上手く抜き取れば良い。それは解っていますよね」
「あぁ、分かっている。安心してくれ」
周囲に木々があれば、そこから養分を吸って再生出来る。
それはトレントの大きな強味であり、中々厄介な特性。
木魔法も人によっては面倒な攻撃になる。
大きな槍、多く細かい礫。なによりトレントの鋭い枝による鞭攻撃がルーキーを苦しめる。
「相変わらず手数の多さだけは厄介ですね」
しかし、そんな事を関係無いといった様子でミレアナとザハークは本体に近づいていく。
トレントの表情は基本的に動くことはない。
だが、前から迫りくる冒険者二人に恐怖を抱き始める。
周囲の木々から養分を吸い取ることで、体の再生だけではなく魔力も回復できる。
早急に倒すべきだと判断したトレントたちは同士討ちの可能性を無視し、最高火力で敵を始末しようと動き始めた。
「トレントだからか、他の同ランクのモンスター比べて知能が優れているのかもしれませんね」
冷静に敵の動きを観察しながら、まずは一つ魔石を抜き取った。
「周囲の木々から養分を吸い取って魔力を回復しているのか……俺たちを危険視してくれているのは光栄だが、自分たちのボスのことは考えているのか?」
全く考えていなかった。
確かにトレントたちはエルダートレントの部下的な立ち位置だが、そこまで上司の未来を考えてはいなかった。
そうこうしているうちに最大火力の攻撃を全て躱すか弾かれ、懐へと近づかれる。
周囲の木々を吸い取れば体が再生し、魔力が回復する。
そして木魔法を使ったて手数が多い攻撃を得意としている。
だが一つ大きな弱点があり、移動速度が遅い。
「近づいてしまえば終わりですね」
「これぐらいなら緊張する必要はなかったな」
二人共身体能力は高く、脚力は一級品なのでトレントが止まった瞬間に魔石を抜き取るぐらいは、造作もなく終わった。
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