五百三十四話 本人ではないからこその意見
「可能性がゼロとは言えないが、それでもそいつは満足してるんじゃないか? やれることは全てやって、それでも長剣の才は自分にないって気付いたんだし」
最後まで努力を諦めずに続けた結果、才能がないと解る。
逆に最後まで努力を続けずに中途半端に諦めてしまう。
結果、どちらが後悔するかは人それぞれ。
しかしソウスケは後者を選んでしまった場合、必ずどこかで後悔すると思った。
(最後までやりきって無理だと解かれば、次に気持ちを切り替えて新しい武器に挑戦出来る。でも、中途半端に諦めたら変な未練が残り、後を引きずりそうだ)
後を引きずってどのような影響があるのかは分からない。
ただ、気持ちを切り替えられずに前を向けなそうだということだけは解る。
「そういうもんか?」
「そういうもんだと思う……まっ、前を向けるかどうかは本人次第だけどな。そこはダイアスがどう頑張っても仕方ない部分だ」
「そうか……って、ソウスケ君。本当に十五歳なのか?」
「正真正銘十五歳だけど、どうかしたか」
「いや、あまりにも考えが大人びてると思ってな」
ダイアスには自分と同じ、もしくは歳上の同僚と話している様な気分だった。
だが、本人の言葉通りソウスケは正真正銘の十五歳。
まだまだ二十歳を超えるには五年ほど掛かる。
「どうだろうな。俺はダイアス本人じゃないからそういう件に対して、客観的な意見を考えられるだけで……俺がダイアスの立場になれば、思い浮かぶ考えはまた変わってくると思うぞ」
今まで数人ほど相手に、アドバイスをしてきた。
しかしそれは経った数時間、もしくは数日の話。
絆や信頼が生まれるほど長い間教え続けてはいない。
だからソウスケにはダイアスの教師としての気持ちに、理解出来ない部分がある。
それを本人が自覚しているからこそ、更に冷静な頭で考えて言葉が出てくる。
「……ははっ、やっぱり大人びてるよ。もしかして精神年齢は三十歳ぐらいじゃないのか?」
「客観的に物事を見れてるだけだって。中身はそんなおっさんじゃない……と、思う」
まだまだ中身も若いと思っているが、ソウスケは酒こそ大して飲まない。
だが、カジノでルーレットやポーカーで遊ぶのが好き、娼館に行って性欲を満たすのもたまらない……等々を考えると、自分で思っているよりも中身が老けているのかもしれないと思ってしまったが、直ぐに首を横に振った。
(いやいや、別に俺ぐらいの年齢でルーレットやポーカーが好きな奴は結構いる筈だ。ギャンブルなんて大抵の奴は一度興味を持つ遊びだ。それに娼館とか……男なら絶対に興味を持つ対象だよな)
世の中には美の神と親の遺伝子から授かった超絶ハイスペックな顔を持って生まれ、異性からモテ過ぎて娼館になど興味が無い人間もいる。
そんなパーフェクトイケメンは何故わざわざお金を払い、女性を抱くのは不思議に思うだろう。
だが、大抵の男は興味持ち……勇気を出して店の中に入る。
そして極上の快感を体験し、ニヤニヤとした少々キモイ笑みを浮かべながら店を出る。
ただ、店選びを間違えてしまうとハズレを引いてしまう場合もあるので、ギャンブルと同じく要注意なら遊びだ。
「うん、別にそんな老けてないぞ。とりあえず、十日後ぐらいには臨時教師の依頼を受けられると思う」
「分かった。学園に戻ったら早速指名依頼を出しておくよ」
ソウスケたちが地上に戻ると、三日後にはギルドに学園側からソウスケたちに臨時教師としての指名依頼を出した。
上の人達を説得するだけの報酬額を引き出すのに少々時間が掛かり、ダイアスたちの根気強い説得もあってそれなりに報酬額が約束された。
「良いペースだな」
だが、その指名依頼を受ける前にソウスケたちは中級者向けのダンジョンの最下層、ラスボスの部屋に向かって走って走って走っていた。
なるべく多くの敵と戦いたいと思っているザハークも、二十一階層から二十九階層までに現れるモンスターとの戦いには少々飽きていた。
そして攻略スピードを上げて上げた結果……ソウスケたちはたった三日間で三十階層のボス部屋の前に到着した。
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