五百二十六話 俺のエース

「いや、冗談じゃないぞ。ほら」


信用して貰うためにソウスケは懐からギルドカードを取り出し、三人に見せた。


「……マジだ。本当にEランクだ」


「嘘でしょ……えっ、あんまりギルドの依頼は受けないタイプ、なの?」


「そうだな。ギルドの依頼を受けるよりもこうやってダンジョンに潜ったり、面白そうな噂を聞けばその場所に向かってみたり……って感じだな」


冒険者としては少々不良な三人。

ギルドもソウスケ達はもっと早く上に上がって欲しいと思っている。


実力がある冒険者はそれ相応のランクになって欲しいという考えもあるが、一番は少々厄介な敵性依頼を受けて欲しいという思いがある。


「まぁ、この三人の実力があればそういった生き方も無理ではなさそうだ。見たところ……ランクには興味ないのだろ」


「そうだな。ランクを上げなくても飯は食べられるし、あんまりランクを上げなくても問題無いかなって思ってる」


ソウスケの回答を聴き、教師陣はそういった考えもありだろうと思い、うんうんと頷いて納得している。

だが、まだまだ冒険者になっていないひよこの生徒達は……言葉にこそ出していないが、その考えに怒りを感じているのが見え見えだった。


(おっと、流石にこの先冒険者になる後輩がいるのに、少し不用意な言葉だったか。でも、ランクにあまり興味が無いのも事実だからな)


ランクを上げればしょぼいくせに、態度だけはデカい冒険者が絡んでこなくなるかもしれない。

だが、ランクを上げたところでソウスケの見た目が変わる訳ではない。


ランクを上げても、見た目が変わらなければソウスケ的には、結局自分に面倒な連中が絡んでくるとしか思えない。

ただ、威圧すればある程度の冒険者は殺気は怒気にビビり、一歩引くと解った。


それならやっぱり無駄にランクを上げる必要はないと判断。


「気ままに旅を楽しみたいタイプか……そういった連中は総じて強いんだよ。さっきの戦いだって、全然本気じゃなかっただろ」


「そんなことはないぞ。俺のエースであるこいつを使ったし、ある程度本気で戦っていたぞ」


ソウスケにとって蛇腹剣はエースと呼べる強力な武器だ。


(グラディウスは……斬り込み隊長? 水龍の蒼剣は秘密兵器……ジョーカーって感じだな。雷のハンマーも似た様な感じか)


それら以外にも、ソウスケの空間収納の中には大量の武器が溜め込まれている。

それこそ、他の冒険者ならソウスケの言う様なエースと呼べる武器がゴロゴロと。


「確かに有の武器は凄かったな。ただ、扱い辛そうにも感じた」


「それは間違っていないと思う。普通の剣としても扱えるけど、本領を発揮すると勝手が違うからな」


「なるほど……確かに剣というよりは鞭って感じだったな」


「ダイアス。お喋りは良いけど、まずはこの死体を何とかした方が良いんじゃないの?」


「っと、それもそうだな……なぁ、ついでに解体も手伝って貰っても良いか」


「勿論だ」


元々ソウスケも倒したモンスターは解体するつもりだった。

そして今回はあまり参加しないザハークも、周囲に襲ってくるモンスターが現れるような場所ではないので、解体に強制参加。


少々苦戦しながらも徐々に進めていく。


倒したモンスターの数は二百以上と多いが、解体する人数が生徒達も含めて十三人なので、そこまで時間を掛けずに解体を終えることが出来た。


「いやぁ~、解体の腕も中々じゃねぇか。本当にルーキーか?」


「期間的にはまだまだルーキーだ。ただ、一回の戦闘で倒すモンスターの数が多いから、解体には必然的にそこそこなれたんだよ」


「はっはっは!! そういうことか、それなら納得だ。それで……最後はこれについて決めないとな」


全員で頑張って解体を終えた後、部屋の中には一つの宝箱が現れた。

しかも、ただの宝箱ではない。


その宝箱だけでかなりの金が取れるのではと思える程、装飾が豪華なのだ。


「……結構このダンジョンに潜ってはいたが、こんな豪華な宝箱を視るのは初めてだ」


「確かに豪華だな。もしかして、この部屋の中の戦いで生き延びたからか」


「多分そうだろうな……まっ、この箱はソウスケが受け取ってくれ」


「えっ、良いのか?」

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