五百二十七話 半分こしよう

確かにソウスケ達も戦った。

ぶっちゃけた話、後から来たが三人が七割方のモンスターを倒していた。


だが、ソウスケとしては十人の方が先に来て苦労して戦っていたので、今回は教師陣に渡しても良いと思っている。


(だって、どんなに優秀でも生徒達は所詮、まだ生徒。戦っている様子を見る限り、先生たちはモンスターの討伐をメインで動きながらも、生徒達が重傷を負わないように、死なないようにサポートしていた)


勿論、三人が生徒達の先生だからという理由ではあるかもしれない。


しかしそれでも、七人の生徒達をサポートしながら戦うというのはどれだけ大変なのか……少しは感じ取れた。


「俺としては……先にこの場所にいたのはあんた達だ。この宝箱は、あんた達にも受け取る権利があると思っている」


「……実力は桁外れなのに、随分と優しいんだな。その気持ちは有難い。でも……この宝箱は受け取れない。お前らもそう思うだろ」


「そうね。ダイアスの言う通り、この宝箱は受け取れないわ」


「俺達より、君達の方が明らかに多くのモンスターを倒した。宝箱を受け取る理由は、それだけで十分だ」


三人共自分達が受け取るべきではないと、答えは一致していた。

生徒達の中には何人かが明らかにレア度の高い道具が入ってそうな宝箱を、ソウスケたちに譲ることを不満に思っている者もいる。


だが、自分たちよりもソウスケたち三人の方が圧倒的にモンスターを倒していた。

それは認めざるを得ない事実。


何故自分達とそんなに歳が変わらないソウスケが、あそこまで桁外れの強さを持っているのか……小さな不満等はなこるが、宝箱をソウスケたちに渡すことに異論はない。


「……分かった。それじゃあ、こいつは貰うよ」


豪華な装飾が施された宝箱を受け取り、亜空間の中へと入れる。


宝箱に関してはこれで終わり。

だが、まだ決めなければならいことがあった。


「なら、この素材は半分ずつ分けようか」


「……いや、あのな。その気持ちは嬉しい。嬉しいんだが……ちょっと優し過ぎないか?」


単純な感想だった。


目の前の少年が優し過ぎる。

自分達も多くのモンスターに囲まれながら戦った。


だが、ソウスケたち三人の方が圧倒的な数を倒していた。

自分達が倒した数など、ソウスケたちに比べれば大した数ではない。


素直にそう思ってしまう。命あっての儲け物だ。

何かを望むのは良くない。


そう思ってしまう程に……ダイアスたちは危機的状況に陥ってしまったのだ。


「そうか? ……あれよだ。二人が優秀だからさ、ある程度強いモンスターでも怪我を負わずに倒しちゃうんだよ。だから依頼を受けてなくても素材や魔石を売れば結構なお金が入ってくるんだ」


「因みに俺は実戦が好きだ」


「そうなんだよ、ザハークは殺気を溢れさせて襲ってくるモンスターと戦うのが好きなんだ。だから結果的に一日で結構な数のモンスターを倒すんだよ。だからランクが低くても、結構貯えはあるんだ」


自分の実力は関係無いという嘘を混ぜているが、十分な貯えがあるのは事実。

モンスターの素材を売却した金、リバーシやチェス、エアーホッケーを売ったお金で懐は潤っている。


なので今回他の大乱闘で得た素材を売った代金を折半しても、特に思うところはない。


「そ、そうなのか……若いのにしっかりしてるんだな」


「……ソウスケ君の気持ちは嬉しいわ。えぇ、本当に嬉しい。でもね、この大量の素材を上に持って帰ることが出来ないのよ」


とりあえずソウスケからの提案を受け入れることにした。

教師陣にとって、生徒にとっても臨時ボーナスが入って嬉しいのは間違いない。


だが、これだけの素材を地上に持って帰ることが出来ない。

残念だが、ギルドまで素材を運ばなければ換金することは出来ないのだ。


「あぁ、なるほど。それに関しては問題無いですよ。俺の空間収納に入るんで」


「それはどういう、こと…………」


事前にミレアナが今回の大乱闘で得た素材を洋紙に書き終えているので、どんどん亜空間の中に素材と魔石を入れてしまう。


その本来ならあり得ない光景を観て教師陣だけではなく、生徒達も全員口をポカーンと開けて固まってしまった。

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