五百二十五話 お互いに運悪く

「ふぅーーーー、終わった終わった」


初めて引っ掛かってしまった転移トラップには驚いた。

だが、モンスターの実力があまり高くないということもあり、ソウスケ達は重傷どころか軽傷を負うことなく大量のモンスターを討伐出来た。


(でも、あそこまで大量のモンスターに襲われたのは初めてかもな。それなりに良い経験にはなったか。Bランク以上じゃなくても、ある程度の数を倒せばレベルも上がるしな)


ソウスケは現在、冒険者の中でもレベルはかなり上位に位置する。

そうなれば当然、自身のレベルは上がりにくくなる。


それはミレアナとザハークも同じく、強敵を倒さなければサクッとレベルは上がらない。


「そんで、あんた達も大丈夫か」


「あ、あぁ。お前達が転移してきてくれたお陰でな」


ソウスケ達よりも先にこの部屋に転移した者達の数は十。


(……ザっと見た感じ、三人はベテランか……もしくはそれ以上の冒険者。でも、他の七人はちょっと違う様な……てか、制服っぽいのを着てるし、もしかして学生なのか)


胸当てやローブを着ていて所々しか見えないが、その下に制服の様な服が見える。


「どうも、俺達はモンスターにうっかりやられてこの部屋に転移したんだ。一応冒険者のソウスケだ」


「私はミレアナです。よろしくお願いします」


「俺はザハークだ。少々中途半端な見た目だが、オーガだ」


ザハークの自己紹介に一同は一歩下がりながら驚く。


(まっ、そういう反応になるよな)


十人の反応は最初から予測出来ていた。

ザハークも同業者の反応に特に思うところはない。


「き、鬼人族じゃない……んだな」


「あぁ、鬼人族なら……もう少し服装がまともではないのか?」


「そ、そうだな……うん、そうかもしれない」


別にザハークは素っ裸ではない。

だが、人間と比べれば布の面積が少々少ない。


ザハークがモンスターということもあり、あまり服を着ると少々むずむずする。

防具を身に着けたり、多少の服を着ているぐらいなら問題無いが、フルセットで着るとやはりむずむずしてしまう。


「それで、あんたらも……冒険者、だよな」


「おう、一応な。でも、今は冒険者兼教師なんだ」


「へぇ~~、やっぱりか」


容姿の年齢が自分と似ている生徒が制服を着ているので、もしかしたらと思っていたが、ビンゴだった。


「それじゃあ、教師三人が生徒七人の監視役? 的な感じでニ十階層にやって来たってことか」


監視役。その単語を聞いた瞬間に数人の生徒があからさまに不機嫌な表情に変わる。


七人は特に問題児という訳ではなく、優秀な成績を残しているからこそ、教師と同伴だがニ十階層まで転移することを許された……所謂、エリートたちだ。


「だいたいそんな感じだ。こいつらは学生にしては優秀だからな。俺達教師が三人に付いて行けば問題が起きても問題無く解決出来ると思ったんだが……戦闘が終わった後に一杯食わされてな」


「自分のところと同じだ。ポイズンスパイダーの群れとクイーンと戦ってたんだ。倒し終えた後に解体をしているとギリギリ生きてた奴が転移トラップを発動させてた」


「はっはっは!! 丸っきりうちと一緒だな。にしても……ソウスケは相当強いな。見た目は若いが……もしかしてCランクか? それともBランクだったりするか?」


教師の中でも一番強い男が軽い気持ちでランクを尋ねた。

この問いに、ソウスケは別に答えなくても良い。


ただ……自分達がその強さは絶対的に信頼している教師が一流以上のランクかもしれない。

目の前の少年にそんな評価を下したことに、死ッとする生徒がいた。


「いや、Eランクだ」


「「「……はっ!!??」」」


リーダー教師だけではなく、他の教師二人もそんな事はあり得ないと思い、不本意な声が出てしまった。


「じょ、冗談だろ?」


見た目だけならエルフのミレアナとオーガと鬼人族の中間の様なザハークの方が、断然強く思えるだろう。

だが、かなりの経験を積んでいる三人からすれば、ソウスケも見た目だけで判断すれば騙される強さを持っていると解る。


なにより、今回の大乱闘の際にチラッとだけだが、モンスターの大群に躊躇することなく立ち向かい、瞬殺していくソウスケの姿をバッチリ見ていた。

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