五百二十四話 初めてのトラップ

「クイーンがいたからか、少々厄介に感じました」


「毒液や粘着性の糸は勿論厄介だけど、蜘蛛系のモンスターって意外と素早いからな。クイーンの統率スキルで身体能力が上がれば……ベテラン冒険者でも手こずるかもな」


先程まで戦っていたモンスターを冷静に分析する二人だが、余裕でポイズンスパイダーとクイーンを倒している。


ミレアナは本気で粘着性の糸が厄介だと思っている。

躱しても地面に落ちた糸の粘着性は失われない。


少しでも油断すれば糸に足を捕われ、動きが止まる。

そしてその隙に毒をぶち込まれて行動不能……といった感じで殺されてしまう。


だが、ミレアナの矢はネット状に放たれる糸の間を潜り抜け、ポイズンスパイダーの脳を貫いていた。


ソウスケも毒液と粘着性の糸、そして毒糸は厄介な武器だと認識している。

しかし全ての攻撃を躱す、もしくは風の斬撃で対処して敵の体を切断し続けた。


快勝と言える結果だ。


「解体は……今回は後で良いかな。とりあえず回収しよう」


死体をどんどん亜空間へと放り込んでいく。

今日、夕食を食べる前にでも解体してしまえば良い。


そう思っていたのだが、クイーンを含めて殆どのポイズンスパイダーを亜空間に入れ、あと残り数体となったところで、まだ神経が生きていたポイズンスパイダーが足を動かした。


その結果……一つの罠が発動。


「ッ!!! 二人共、離れるな!!!」


「「了解!!」」


三人の足元に一つの大きな魔法陣が現れた。

既に転移は開始されているので、無理に離れようとするのは良くない判断。


三人は転移トラップに身を委ねることにした。


(……なんか変な感覚だな。気持ち悪くはないけど……でも、体がむずむずする)


初めて転移系のトラップに引っ掛かった。


ダンジョンの一階層から別の階層に移動する時は感覚が違う。

感じ方は人それぞれだが、大半の冒険者達はこの転移に悪意を感じると答える。


そして転移が終わると……三人はとある部屋の中にいた。


「……なんか、いきなり修羅場って感じだな」


部屋の中は洞窟タイプ。

部屋の面積はかなりの広さ。


「ソウスケさん、とらえず対処しましょう」


「そうだな。ダンジョンに生息しているモンスターらしく、俺達を殺す気満々だ」


部屋の中には先程戦っていたポイズンスパイダーよりも数が多いモンスターが存在しており、ソウスケ達よりも少し早く転移トラップに引っ掛かり、モンスターと戦っている冒険者達もいた。


「オーク、コボルト、ボア、キャット、リザードマン……トロル、ビートル系? モンスターの系統は全く揃っていないし……てか、一般的なモンスターパーティーよりも数が多いよな」


先にこの部屋に来ていた冒険者達に声を掛けない。


助けはいるか? そんな言葉は不要だ。

数は二百を超えている。


そんな状況で助け合わないなど、馬鹿過ぎる。


魔石や素材の状態などは気にしない。

倒して倒して倒しまくる。


ソウスケは久しぶりに指輪状の蛇腹剣を剣状に戻し、多くのモンスターを抉り斬る。


(こいつら……こんなに数が多いのに、よく他のモンスターの攻撃にぶつからずに済んでるよな……もしかしてモンスター同士で正確にコミュニケーションを取っているのか?)


三人とその他の冒険者と近い位置にいるモンスターは接近戦を仕掛け、離れた場所に居て遠距離攻撃が出来る個体は全力で攻撃を放つ。


だが、いくら部屋が広いとはいっても二百を超えるモンスターが一度に動けば体は勿論、モンスター同士の攻撃がぶつかってもおかしくない。


しかしソウスケが戦闘中に確認する限り、その様な衝突は殆ど無い。


(もしかしたら野生の勘? 的なのが地上のモンスターよりも優れているのか……ダメだ、鑑定で視ても念話とかのスキルは持ってないし、野生の勘、直感とかそんな感じのスキルも持ってないし……分らん)


結局動きの正確性は分からなかった。


だが、それでも襲ってくるモンスターを倒すのは容易い。

ランクがEからCのモンスターが大量にいるが、それ以上の実力を持つモンスターはいないので、ソウスケ達が奇襲で致命傷を食らうこともない。


初めて転移トラップに巻き込まれたことに驚きはしたが、三人が重傷を負うことはなく大乱闘を制した。

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