五百二十三話 実戦で使う時間を増やそう


毒液や粘着性の糸を使って相手を弱らせ、獲物を喰らおうとするポイズンスパイダー。

そしてその群れには長であるクイーンポイズンスパイダーがおり、統率のスキルでポイズンスパイダーたちの身体能力が上昇。


決して肉体派ではない蜘蛛系のモンスターだが、素早く動けるというのはそれだけで厄介だ。


「ほぉ……意外と速く動きますね」


初手の弓を外したミレアナはその速さに少々驚いたが、直ぐに弓の速度を調整して的確に捉え始める。

正確に急所を穿ち、一射一射でポイズンスパイダーを仕留めていく。


「ふむ、やはり弓はどれほど訓練してもミレアナには敵いそうにないな」


水弾を空中に浮かべ、ポイズンスパイダーを一撃ではなく……脚を止めてから手に持つ水球で仕留めるという方法を繰り返している。


ザハークの得意分野は接近戦での殴り合い。

あまり遠距離攻撃は得意ではないが、それでも搦手が得意な相手と戦う時になるべく慣れておこうと水弾や水球を使って急所を狙い撃つ。


(良いペースで仕留められている……だが、昆虫系だからか、急所を貫いた後も動くな。まぁ、俺達にとっては特に問題無いが……初めて戦うルーキーなどは油断してやられそうだな)


昆虫系のモンスターはかなりしぶとく、例え脳を潰されても少し時間であれば動ける。


そういった知識を持っていない者はルーキーやベテランなど関係無しに、手痛い一撃を食らってしまう。


「水の魔力以外も使ってみるか」


肉体派の見た目に反して魔法の才も持ち合わせているザハークが使える魔法は水だけではない。


水弾の次は風の刃を生み出し、ポイズンスパイダーの脚を両断して動きを止め、キッチリ急所を潰していく。

だが、全ての攻撃が成功している訳ではなく、まだまだミレアナやソウスケほど魔力操作の腕は高くない。


「むっ……やはり日頃から訓練すべきか。この街にいる間は接近戦と同じぐらい遠距離戦で戦うようにしてみるか」


まだまだ慣れていない部分もあるが、着実に討伐を増やしていくスーパーエリートオーガ。


「……糸や毒液は厄介だけど、攻撃の速さ自体はやっぱりそんなにって感じだな」


二人とは違ってソウスケは接近戦でポイズンスパイダーの群れを攻めていく。

両手には風の魔力が刃状に伸ばされ、ネット状の糸や毒液、毒弾をサラッと躱して胴体を切断、もしくは刺突で仕留めていく。


周囲にはミレアナの弓やザハークの水弾や水球、風刃が飛んで来るが、一度もぶつかることなく踊るように戦場を駆ける。


(これぐらいの相手なら、手こずることは全く無いけど……やっぱり糸って厄介だよな。粘着性があって、個体によっては普通の糸を毒糸に変えられる。それに糸の性質を変える個体もいるし……まっ、何はともあれスパイロードの制作素材が手に入るのは嬉しいことだな)


基本的に売るつもりはない、ソウスケが造ったオリジナルのマジックアイテム。

だが、暇なときにエアーホッケーと並行してちょいちょい造っている。


(てか、ポイズンスパイダーの糸だったら本人の魔法センス関係無しに、跳び出す糸を毒糸に出来るよな……やっぱり多様性抜群だよな、糸って……ちょっと俺も使ってみようかな)


蛇腹剣で喰ったモンスターの中には蜘蛛系がいるので、ソウスケはポイズンスパイダーたちと同じように、手のひらや脚から糸を出すことが出来る。


「よっ、ほっ!!」


スキルレベルがある程度高ければ、ソウスケの修練時間など関係無しで上手く扱うことが出来るので……ソウスケはササっと四本の脚を糸で縛ってしまい、頭部を切断。


「良いね、やっぱり体の一部を縛ればどうしても隙が生まれるよな」


気分が乗ってきたソウスケはその後も糸を使用しながら討伐を続ける。

自分達とは全く見た目が違う敵が糸を使った事に多少驚きはしたが、直ぐに三人の殲滅に戻る。


ポイズンスパイダーたちは最後まで三人を殺そうと懸命に戦い続けたが……あまりにも質が違い過ぎる。

その結果、三人はいつも通り傷一つ負うことなく、クイーンを含めてポイズンスパイダーの討伐を終えた。


だが……まだ戦いは終わっていなかった。

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