四百九十一話 三段階
「ソウスケさん、中で何かあったのか?」
二人が外に出ると待っていたザハークはギルドの中で何かあっただろうと思い、内容を尋ねる。
「バカが近寄って来ようとしたから殺気を出しただけだよ。相手にするのも面倒だったからな」
「なるほど、確かにそれは面倒だ」
「だろ。それに俺が軽く殺気を漏らしただけで怖気づくような奴なんて、大した用なんて絶対に無いんだよ」
まさにその通りであり、ソウスケに……正確にはミレアナに声を掛けようとした冒険者の目的はナンパと変わらない。
誰もソウスケに興味を持っていなかった。
「殺気だけで終わらせず、一発腹にぶち込んだ方が良かったんじゃないか?」
「私は元々そのつもりでしたが……ザハークの言う通りやはりその身に力の差を思い知らせた方が今後の為かと」
「は、ははは。そ、そうかもしれないな」
相変わらず少々過激な二人にソウスケは思わず苦笑いになる。
(やっぱり俺より二人の方がおっかないよな)
自分の総合的な戦力を考えれば二人よりも上だろうと思っている。だが、過激さに関してはミレアナとザハークの方が完全に上であった。
「でも、一応俺の殺気を受けて向かってくるのを辞めたんだ。言っても聞かない連中だとは思うが、殺気には反応出来るってことだろう」
ソウスケもそろそろ自分達の言葉を聞かない連中に関しては武力行使で対処しても良いだろうと思っている。
だが、その前にまず言葉を交わしてそれでも引き下がらないのであれば殺気や怒気を露わにする。
大抵の相手はそこで引き下がってくれると信じている。
というより、素人に近い勘違い野郎であれば理由は分らないがソウスケに恐怖を感じてへたり込んでしまう。
最悪の場合、失禁してしまうだろう。
そしてある程度相手の実力が解る者であれば、それこそソウスケの底知れない実力を感じ取れる筈。
だが、相手が強いというのは解るが、自分の方が強いと思っている謎の自信を持っている者が厄介な存在だ。
そういった者が相手なら、ソウスケも遠慮なく拳をぶち込もうと決めた。
「俺も相手が引き下がらないならそろそろ軽くぶっ飛ばそうかなって思ってるから」
「それが一番です。ソウスケさんに絡んでくるような愚か者には、実際に実力差を解らせるのが効果的ですから」
「男なら本能的に一度ボコボコにされればプライドも潰されるだろう。それを考えればやはり潰すのが一番だ」
ザハークの言葉は少々野性的な気がしなくもないが、間違ってはいない考えだ。
冒険者はプライドだけは一丁前な連中が多い。
そのプライドを粉々に砕かれれば、しばらくの間は立ち直れなくなるだろう。
「それで、これからどうするんだ? もしかしてこのままダンジョンに向かうのか?」
「あぁ、そのつもりだ。特に準備する物もないからな」
「そうか!!」
ザハークの表情が一気に上機嫌になる。
(分かりやす……まぁ、今のところ戦うことと鍛冶、後は飯が生き甲斐って感じだもんな)
ソウスケはそこに錬金術でマジックアイテムを造ったり、女性を抱くことがプラスされる。
「でも、初心者用のダンジョンから攻略するから最初はそんなに面白くは無いと思うぞ」
「それは解っている。だが、ダンジョンの地図は買っているのだろう。それなら早く攻略出来る。そうすれば次は中級者向けのダンジョン、そしてその次は上級者向けのダンジョンに挑むんだろう?」
「ま、まぁな。けど、ちょっとは休憩を挟むからな」
知らないうちに体が疲れてる、なんて事は良くある。
自分の体のことは自分が一番解ってるなんて言う者もいるが、他者かの目線で見なければ解らない部分は確かにある。
ソウスケ達のスタミナの量や、探索のペースを考えれば連日で挑み続けても問題は無いかもしれないが、それでもソウスケは多少の休憩は必要だと思っている。
(初心者用のダンジョンは戻って休まず一気にクリアするだろうけど、中級者向けと上級者向けはちょっと休憩を挟みながら攻略しないとな)
ダンジョンは逃げやしない。
なので、慌てる必要は全くない。
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