四百九十話 近寄んな
受付嬢に言われた通り二人はギルドカードを渡した。
ギルドカードに記されているランクはE。初級者向けダンジョンに潜るならまだしも、中級者用と上級者用のダンジョンに潜れるようなランクでは無い。
だが、何かを言われる前にソウスケは右腕を受付嬢の前に出した。
「こういう事も出来るんだ、ランクに関しては気にしないで欲しい」
ソウスケは五本の指にそれぞれ小さな火、水、風、土、雷を浮かべる。
それに続いてミレアナは四本の指に火、水、風、氷を浮かべて受付嬢の前に手を出す。
「そういうことなので、よろしくお願いします」
「か、かしこまりました!!!」
受付嬢は慌てた様子でギルドの奥へと向かってダンジョンの地図や情報が掛かれた紙の複製を持ってきた。
「こ、こちらになります。それで金額なのですが……き、金貨二十五枚になります」
日本円にして二千五百万円。
高過ぎるだろと思う者もいるかもしれない。
だが、初心者用のダンジョンの地図はそこまで高くないが中級者向けの下層の地図、そして上級者用のダンジョンの中層から下層の地図は総じて高い。
なので、全てを買おうとすればそれなりに高い値段になってしまうのだ。
しかしソウスケは一切驚くことは無く、懐から金貨二十五枚を受付嬢に渡す。
「えっと……はい、しっかりと二十五枚ありますね」
受付嬢とのやり取りが終わった後、二人は直ぐにギルドから出ようとする。
準備はいつでも万端なので今からでも初心者用のダンジョンに潜ろうと思っていた。
だが、そんな二人にゲスイ事を考えている冒険者達が歩み寄ろうとしていた。
(……なんかもう、本当に鬱陶しいな)
最終的にはミレアナの殺気と怒気に圧されて逃げるか、吹っ飛ばされて終わるので見ていて面白いという部分はある。
それでもそろそろちょっと面倒だなと思い始めた。
「……邪魔だな」
そう言うと、ソウスケは一瞬で殺気を歩み寄ってくるゲス共向けた。
「「「「「ッ!!??」」」」」
少年と呼べる見た目の子供から放たれた殺気。
なんてことは無く、そんなもの余裕で耐えられる……そう思うのが一般的だ。
ただ……殺気を向けられたゲス共は自分達の首に手が添えられ、思いっきり握りしめられる錯覚を覚えた。
そして慌てて自分の喉元に手を当てて無事なのかを確認する。
当然、喉は問題無い。殺気を向けられて感じだ錯覚なのだ。
実際に潰されたわけではない。それでもゲス共の呼吸が浅くなる。
「大した用も無いのに、近寄ってくんな」
小さく、しかしハッキリと耳に入る声で呟いた。
ゲス共にはそれが死の宣告の様に感じ、体が震えあがる。
震える者達の中にはソウスケに殺気を向けられて尻もちを付いている者もいた。
そんなゲス共を笑う冒険者はギルドの中にいなかった。
二人に絡もうとしなかった冒険者に殺気は向けられていない。
それでも少年が接触しては自分達にまで被害が及ぶ猛獣の様に感じた。
「低ランクのルーキー……じゃねぇのか?」
二人の相手を担当した受付嬢の表情を細かく見ていれば、二人がランクに合わないダンジョンの情報を得ようとしたのは解る。
しかしその後、受付嬢は慌ててダンジョンの情報と地図が書かれた複製品を持ってきた。
「ただ美人のエルフの姉ちゃんにおんぶ抱っこのルーキーではない、のかもな」
殺気を放っていたのはエルフの冒険者ではなく、その隣にいる少年。
それは周囲の冒険者達も解っていた。
その場にいた冒険者達は不用意に二人に関わってはならないと、頭の片隅にその情報を置いた。
「珍しいですね、ソウスケさん」
「なにが?」
「あそこまでゲス共に殺気をだすなんて普段はしないじゃないですか」
ゲス共が自分達に絡もうとしている。それはミレアナも解っていた。
なので一人ぐらい潰せば黙るだろうと思い、いつでも潰せる準備はしていた。
勿論、最初は言葉で断ろうと思っていたが、ゲス共がそう簡単に諦める訳が無い。
「あぁーーー……なんとなく、鬱陶しいって思ったんだよ」
「それには同感ですね。鬱陶し過ぎる害虫です」
「単純にそう思っただけど。後は……折角地図を貰ったんだし、さっさとこのままダンジョンに潜りたいじゃん」
既に冒険者として染まってきているソウスケにとって、やはりダンジョンとは心が躍る存在なのだ。
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