四百六十九話 あそこで出会わなければ

「さっさと終わらせてしまえよ」


「了解した」


ハリス達、蒼の流星の四人対ザハーク。

リアス達としては少々厳しいのではないかと思っていた。


相手はCランクのパーティーであり、対魔物と対人戦に慣れている冒険者。

ザハークが強いという事は重々に承知しているが、少々不安になる。


「そ、ソウスケさん。四対一というのは少し不利ではないでしょうか」


「数だけ見れば確かに不利だろうな。でも、あれぐらいのパーティーだったら特に問題無いよ。さすがにBランクのパーティーが相手だったら不味いなと思うけど」


(でも、Bランクが相手でも殺す気で一人ずつ撃破していけば問題無いか?)


ザハークの本当の実力を考えれば、例えBランクパーティーであっても無傷で勝利とはいかないが、倒すことは可能だ。

ただ、それがBランクとは一線を画すAランクとなれば話は変わってくる。


「さっさと終わらせろって言ったけど……どれぐらいで終わると思う?」


「……十秒もあれば十分ではないでしょうか。遠距離攻撃も出来ますが、ザハークは接近戦が基本的な戦闘スタイル。あの四人が接近戦でザハークに勝つのは不可能です」


「遠距離戦で倒そうと思ってもザハークの速さがそうはさせないだろうし……うん、まともな戦いにもならないか」


ザハークが必ず圧勝すると信じている二人を見て、三人はどのような試合内容になるのか俄然気になり始めた。

そしてこの会話が全く聞こえない位置で対峙している両者。


「君も大変だね。あんな自己中心的な人が主だなんて」


「そんなことは無いな。俺はソウスケさんと戦い、そして仲間として受け入れてもらった。そして美味い飯と達成感のある趣味と心が昂る戦いを得られた。十分に良い主だと俺は思うがな」


ダンジョンの中でソウスケと出会わなければ知れない事が多かった。

そしてその知れた内容は、ザハークのモンスター生にとって知れて良かった内容だ。


そんなソウスケを下に見ているハリス達の気が知れない。


(少々やんちゃなところはあるのだろうが、そういった態度を取るのに相応しい実力を持っている。なのに下に見ているという事は……単純に実力差が理解出来ない馬鹿か)


実際、四人はそこまで馬鹿では無いのだが……ソウスケの実力が理解出来なかったのは事実。

四人にはCランクまで上り詰めたという結果が自信とプライドになっている。


しかも蒼の流星はまだまだ成長中。いずれBランクにランクアップするかもしれない逸材と言われている。

そんな事もあり、ザハークと対峙しても四対一ならば負けないだろうという考えがあった。


「それに、お前らは俺の主を嘗め過ぎだ」


「……彼が、僕達より強いと言いたいのかな?」


「ほぅ~~……なんだ、解っているじゃないか。その通りだ、ソウスケさんはお前達より強い。この地面とあの雲ぐらいの差はあるだろう」


真面目な表情でザハークは地面と雲を指さした。


「はっはっは、それは中々面白い冗談だね。僕達が……彼より弱いと」


ザハークにはそこまで敵意を持っていなかった。

だが、こうして話せることで従魔であるザハークの考えが伝えられる。


そして四人共分ったことがある。目の前のオーガはソウスケと同様に自分達を下に見ていると。

四人にとっては闘争心を駆り立てるに十分な感情だが……ザハークとしては間違いのない見解。


蒼の流星のメンバーは自分より弱い。そしてソウスケより弱い。

それは束になって戦ったとしても変わらない。


「純然たる事実だ。ソウスケさんが実力を隠すのが上手いのか、それともお前達が相手の力量を見抜く力が無いのか……まぁ、俺にとってはそんな事どうでも良い」


蒼の流星にとってはどうでも良い内容では無いのだが、話ながら準備運動を終えたザハークは戦闘態勢に入る。


「さて、主にはさっさと終わらせろと言われたんだ。安心しろ、直ぐに終わる」


その言葉が合図となり、両者が動き出した。

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