四百七十話 見誤っていた
「が……はっ……」
「ぬ、お、ぉ……」
「うそ……でしょ」
「そん、な……」
蒼の流星とザハークの戦いが始まって約二秒ほど。
ザハークは変わらなぬ表情で立っており、四人は地面にひれ伏していた。
「ふんっ、所詮はこんなものか。偉そうな態度を取っていたから少しは何か特別な力を持っているのかと思っていたが……話にならない」
戦いが始まった瞬間にザハークは身体強化系のスキルを全て使い、四人の腹に一撃を決めた。
勿論殺すつもりで放ってはいない。
だが、ソウスケにさっさとと終わらせろとオーダーを出されたザハークは本気で直ぐに終わらせようとした。
「はっはっは! まっ、そういう結果になるだろうな」
「そうでしょうね。実力が低いとは思いませんが……ザハークの本気の速度の前には無意味な力でしょう。それに、どうやらザハークの力を見誤っていたようですし」
四人はザハークが強敵だとは思っていたが、見た目はオーガなのでパワー寄りの戦闘スタイルなのだと思っていた。
だが、事実としてはミレアナやソウスケと同じくオールラウンダー。
接近戦に関してはパワー、スピード、ガード、テクニック。
どれか一つが物凄く不得手という訳では無い。
「……す、凄いですね」
あまりにも早過ぎる決着にリアスは語彙力が低下しながらも、なんとか言葉を振り絞った。
他の二人もザハークが最終的には勝つだろうとは思っていたが、相手に何もさせずに瞬殺するとは予想していなかった。
「さて、試合はこれで終わりだ。さっさと失せろ、動けない傷では無いだろ。それとも……お前達は勝者から施しを受けないと自分の脚で帰れないのか?」
「ッ……あ、あまり嘗めないで、もらおうか」
四人はなんとか気力を振り絞り、その場から立ち上がった。
「ほぅ~~、立てるだけの根性はあったか。これで証明は済んだな。俺と同じかそれ以上の戦力が三つ……お前達の手を借りずとも俺達は俺達だけの力で噂のモンスターを探す」
「……まだ彼があなたと同等の力を持っているとは思えないが、確かにあなた達にとって僕達と組むメリットは無いようだね」
「先に俺の主がそう言っただろ。一つ忠告だが……実力を見た目で判断しない方が身の為だぞ」
「・・・・・・頭の片隅に置いておくよ」
リーダーのハリスがそう言うと、四人はその場から離れて行った。
「お疲れ~。やっぱり呆気なく終わったな」
「……あいつら、自分達が一方的に負けるかもしれないと思っていなかったのだろうな。最初から本気であれば、最初に一撃ぐらいは防げたかもしれない……まぁ、今更な話だがな」
「そりゃ売られた喧嘩をキッチリ買ったんだ。自分達が負けると思って買う奴はいないだろ」
その言葉の通りであり、何らからの理由がある場合を除いて負けるつもりで戦いに挑む冒険者はいない。
「しかしソウスケさん、このままでは珍しいモンスターが先に他の冒険者と戦うってしまう可能性はなくはないかと」
「……そうだな。もう少しこの辺りを楽しみながら捜索するつもりだったが……明日起きたらちょっとズルして見つけるか」
「ず、ずる……ですか? もしかして何か特別なマジックアイテムを使うのですか?」
探し物がある場所まで使用者を導くマジックアイテムが存在する。
だが、その様なマジックアイテムをソウスケは持っていない。
ソウスケはズルと言ったが、そこまでずるい捜索方法では無い。
寧ろ、原始的な捜索方法と言えるだろう。
「いいや、そういったマジックアイテムは持っていない。ただ、何回行えばある程度発見出来るであろう方法だから、運が良かったら明日にでも見つかると思うぞ。だから……明日に備えて今日ものんびり休もう」
先日と同じく風呂に入り、人口露天風呂を楽しんだ六人は明日起こるかもしれない戦闘の為に英気を養った。
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