四百六十八話 メリット無し

「えっと……もう一度聞かせて貰っても良いかな」


「聞こえなかったのか? 若いのに耳が遠いんだな。断るって言ったんだよ。俺達があんたらと一緒にモンスターを探すメリットは無いからな」


ソウスケの宣言にハリス達の目は思わず点になる。

まさか自分達の提案が断られるとは思っていなかった。


確かにザハークとミレアナからはある程度の強さは感じるが、残りの子供四人が自分より上の存在だとは思えない。

ただ、この火山付近で活動しているので弱いとは思えなかった。


そして狙っているモンスターが一緒となれば、多数で行動する方が見つけやすいのも事実。

自分達はフレイルスではそこそこ名が売れているパーティー、なので自分達の提案が断られたという事実に関しては認識するのが少々遅れた。


「そ、そうかい? 探す人数が多ければ多い程、僕達が探しているモンスターは見つけやすくなると思うけど」


「……数だけを考えればそうかもな。ただ、実際にその珍しいモンスターと遭遇した時に倒せるかどうかは話が別だろ」


「それは……どういう事だい。戦力が増えればモンスターを倒しやすくなるのは当然の事実だよ」


その考えは間違っていない。

戦力が増えれば討伐対象を倒しやすくなるだろう。


ただ……それはその戦力が討伐対象を倒すのに通用する戦力ならばの話だ。


「はぁーーーー……はっきり言ってりゃるよ。お前らと組めば俺らの報酬が減る。それが第一理由だ」


リアス達は珍しいモンスターの生態や特徴が知りたい。

モンスターの素材に関してはそこまで必要ではない。


だが、ソウスケとしては魔石も含めてモンスターの素材は是非とも欲しかった。

なのでモンスターの素材を売ることしか考えていない冒険者と組んだところで、ソウスケにメリットは無い。


そして、二つ目が一番の理由であった。


「二つ目……あんたらの実力ぐらいじゃ、一緒に探すメリットが無い。以上だ」


「……それは、僕達に喧嘩を売ってるのかい?」


見た目は優男のハリスだが、しっかりと冒険者としてのプライドは持っている。

自分達の実力が下だと言われ、黙っていられる訳が無い。


ただ、ソウスケからすれば純然たる事実。


「それなりに実力はあるんだろ。それなら自分達がザハークとミレアナより弱いって事は解かるだろ」


二人よりも弱い。そう断言された四人は完全に表情に現れてはいないが、怒りのオーラが体から溢れ出ている。


(……やっぱり沸点が低いな。ただ、俺としてはマジで組むメリットが無いんだよな。珍しいモンスターの素材は出来る限り欲しい。てか、戦闘になったらマジで邪魔になる予感しかしない)


ハリス達、蒼の流星はバランスの取れたパーティーではあるが、Cランク止まり。

単純な戦力だけで言えば、ミレアナやザハーク一人でも潰せてしまうほど低い。


ただ、正確に相手の力量を解っていないハリス達はその実に簡単に納得は出来ない。


「それは解らないじゃないか。実際に戦っていない訳だしね」


「なら、実際に戦ってみるか?」


その一言に、一気にハリス達の表情が変わる。

本来ならば誘おうとしたパーティーと喧嘩などするつもりは無かった。

しかし、冒険者としての面子とプライドから売られた喧嘩を買わないという選択肢は無い。


(俺からすれば、変なプライドを持ってるなって感じだが……本当にザハークに勝てると思ってるのか? モンスターを相手に嬉々とした表情で挑むオーガだぞ)


確かにザハークは通常のオーガと比べて体は小さく、鬼人族より多少大きいという程度だろう。

ただ、それは普通のオーガより違うと証明する証拠。


なのだが・・・・・・それに全く気付くことが無い蒼の流星。


「ザハーク、食後の運動としてこいつらと軽く一戦どうだ?」


「……俺が相手で良いのか? 嘗められているのはソウスケさんだろう」


通常のオーガだと思っていた従魔が突然人の言葉を話したことに驚くハリス達だが、ソウスケは構わず会話を続ける。


「別に俺はいつもの事だからどうでも良いよ。俺としては他のパーティーと組むつもりは無い。それに、一人にボコボコにされたらそいつらも引くだろ」


その言葉を最後に、四人の怒りの矛先は完全にソウスケに向いた

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