四百六十話 探索開始

「ふぅーーー……にしても、学生だけでこんな危ないところに来るか?」


火山付近に生息するモンスターはルーキーが相手に出来るような強さでは無い。

三人の実力を考えればルーキーに劣るとは思っていない。


ただ、三人にDランクやCランクのモンスターと戦えるだけの実戦経験があるのかどうか。

そこがソウスケとしては心配な点だった。


「まぁ、俺達がいるからそこまで心配する必要は無いか」


通常のモンスターならば三人でも戦うことが出来る。

そして三人が探すモンスターと遭遇することが出来れば戦いはソウスケ達が行い、リアス達にはそのモンスターと特徴等を纏めるのに専念してもらう。


(三人とも貴族なんだし、装備には余裕があるからランクの低いモンスターの討伐は任せても問題無いだろう)


今日は三人共武器を携帯していなかったが、身に着けていたマジックアイテムは上等な物。

それだけで彼女達がどれだけ戦力になるのか、だいたい把握することが出来た。


「……明日のことを今どれだけ考えても仕方ない、直ぐに寝よう」


宿に戻ったソウスケは寝間着に着替えると直ぐにベッドに入った。

アルコールが入っていたこともあり、いつもよりも短時間で深い眠りにつくことが出来た。


そして翌日、朝食を食べ終えたソウスケ達は早速ギルドへと向かう。

お互いに時間前に着こうという意識が強かったのか、十分前には集合した。


「えっと……そちらの方が、ザハーク、さん……ですか?」


「そうだ。こいつが希少種のオーガ、ザハークだ」


ザハークは軽く三人に頭を下げる。

それに釣られて三人も慌てて頭を下げた。


「その、想像していたよりも……あれですね」


「からだが小さい、だろ」


「は、はい。それは希少種だからでしょうか?」


「どうだろうな? 俺はザハーク以外のオーガの希少種に出会ったことが無いからな」


「俺もいまいち解らん。そこら辺は個体によって変わってくるだろう」


ザハークが口を開いて人の言葉を喋ったのに三人は驚く。

事前に聞いていた情報だったが、それでも目の前でモンスターが喋る様子を見て驚くなというのは無理な話だった。


「……ソウスケさん、三人共口をパクパクとさせているが大丈夫か?」


「あ、あぁ。戦闘に関しては問題無いと思うぞ。単にザハークが人の言葉を喋っているのを生で見て驚いてるんだろう」


「そうか。普通のモンスターは人の言葉を喋らないから、驚くのは当然か」


「そういう事だ。今から一緒に火山付近に移動する訳だけど、そこで俺達もモンスターと戦うからその目で実力を確認してくれ」


「わ、分かりました」


三人は既に火山付近で活動する準備が出来ているので、準備に時間が掛かることなく出発。

ソウスケ達だけで火山付近に向かうのであれば大した時間は掛からない。


しかし今回はリアス達、貴族の令嬢三人を連れての行動。

スタミナが自分達より劣るという事は解かりきっているので、歩いて目的の場所に進んで行く。


当然、道中ではソウスケ達を襲おうとするモンスターに遭遇する。


「「ブモォォオオオァァ……」」


二体のオークと遭遇した瞬間、リアス達とミレアナの表情が歪む。


(……うん、オークやゴブリンを見つけた瞬間、女性達が不快な表情になるのは共通しているんだろうな。というか、俺もゴブリンやオークのメスに貞操を狙われたら絶対に背筋が凍ると思う)


ゴブリンやオークにも稀ではあるが、雌が存在する。

殆ど雄しかいないゴブリンやオークの中に存在する雌は特殊な個体であり、下手をすればキングよりも統率力がある可能性がある。


「一体は俺が相手をしよう」


「そんじゃ、もう一体は俺が相手するよ」


二体のオークはミレアナ達四人を完全にロックオンしており、ソウスケとザハークはお邪魔虫でしかなかった。

そんな存在が四人の前に立ったことで、オーク達は苛立ち始める。


「さて、ササっと終わらせようか」


「了解した。ササっと終わらせる」


その言葉通り二人と二体の戦いはササっと終わってしまった。

戦いが始まった瞬間、ソウスケは魔力の斬撃を飛ばし、ザハークはその場で拳を全力で突き出して拳圧を放つ。


その二つの攻撃によって一体の首が刎ねられ、もう一体の心臓が潰されて戦いは終わる。

圧倒的な速さで終了した戦いにミレアナを除く三人は目が点になってしまう。


「肉ゲット~」


「通常種はやはり呆気無いな」

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