四百四十六話 使う者によって変わる

「さてと、造っていきますか」


「そうだな。とりあえず俺は武器をメインに造る」


「オーケー、足りない素材があったら言ってくれ」


街へと戻った翌日、ソウスケとザハークは鍛冶ギルドで鍛冶場を借りて意気揚々と鍛冶を始める。


「そういえば最近は自分が造った武器を実戦で使っていないんじゃないか?」


「……そういえばそうかもしれないな」


「武器の腕も鍛冶と一緒で続けなかったら鈍る。俺も今度の戦いでは長剣以外の武器を使おうかな」


メイン武器はグラディスと蛇腹剣だが、短剣や槍に斧などの武器も一応使うことが出来るソウスケ。

それはザハークも同じであり、短期間で多数の武器スキルを習得している。


そしてその実力はまだまだ成長する余地がある。


(俺も大概だけど、ザハークも大概なんでも出来るからな)


得意という訳では無いが、ザハークは水魔法による治癒も行える。

物理攻撃に魔法による攻撃、そして治癒の三つを行える冒険者はそうそういない。

そういう意味でもザハークは特別な存在と言える。


(……うん、やっぱり武器や防具を造っている時の感覚は良いな)


ただただ一作を造る、その作業はモンスターとの戦いとはまた違う感覚がある。

絶対的な力を持っているからこそ死を恐れずに立ち向える。そしてその先に得られる勝利の感覚は、味わったことがある者にしか解らない。


人によっては命を奪った感触を気味悪く感じる者もいるかもしれないが、大概の者達はその感覚に興奮を覚える。

ただ、稀にその感覚に酔ってしまい……道を外れてしまう者も少なからずいる。


「……よし、こんなものか」


本日の一作目はレッドゴーレムの素材をメインに使用した短剣。

一緒に使用した鉱石と魔石も一定以上の物なので、ランクも四と悪くない。


「ふぅーー……悪く無いな」


ザハークの一作目はスカーレットゴーレムの素材をメインに造られたハンマー。

サイズは二メートル弱とかなり大きく、大型モンスター用のハンマーだろうとソウスケは思ったが、仮に使い手がザハーク並みに器用な巨体の者ならモンスターの大小関係無く扱える可能性はある。


(……視た感じ、攻撃部分以外の所もしっかりと造られている。持ち手の先だって突けば刺さりそうだし……まっ、ザハークのことだろうからそこら辺も考えて造ってるんだろうな)


本日の一作品目を造り終わったソウスケは気持ちを切り替えて今度は盾を造り始める。



「……ゆっくりするとは言っても、何をしましょうか」


とりあえず休日を楽しもうと宿から出たものの、何をするのか全く考えていなかった。


「そうですねぇ……服でも見て回りますか」


そこまでファッションに興味は無いミレアナだが、モンスターの素材等で作られた服やアクセサリーには興味がある。

年頃の女性はもっと自身の容姿などに気を使うものだが、ソウスケに影響されてか大して気にしない。


ただ、ミレアナの場合はその元々の容姿だけ男女問わず目を惹きつける。

今着ている服も大して高くない一般的な服。

しかしそれでもその美貌と体型で多くの者達目で追いかけてしまう。


下手な料理でも皿が高級ならば見る者の評価は変わる。

下手な絵でも入れる額縁によって見る者の眼を惑わす。

そんな魅力がミレアナにはある。


「しかし思ったよりも冒険者の数が多いですね……もしかして何か共通の目的……いや、狙いでもあるのでしょうか?」


街から少し離れた場所に火山があり、冒険者の需要は大きい。

しかしそれでもミレアナはすれ違う冒険者達の数が多いと感じた。


(確かに昨日一昨日と街の外で……特に火山付近には冒険者の数が多かった。もしかして珍しいモンスターでもいるのかも?)


今回の目的はルージュバードの羽。

しかし珍しいモンスターの素材は錬金術や鍛冶を行うソウスケ達に欲しい物。


もしかしたら自分達が遭遇するかもしれないモンスターを想像しながら一店目の店へと入った。

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