四百四十五話 丁度良いサンドバッグ

「ハッハッハッ!!!! 中々手応えがあるじゃないか!!!」


「……楽しんでるようで何よりだな」


翌日、火山付近を探索中にレッドゴーレムの上位種に当たるスカーレットゴーレムと複数のレッドゴーレムに遭遇。

レッドゴーレムの上位種とはいえ、ランクはC。


しかし硬さと力はBランククラスなのでベテランの冒険者でも倒すのに手こずる。

そして今回遭遇したスカーレットゴーレムはソウスケ達が思っていたよりも素早く、より厄介なモンスターになっていた。


(力が強くて防御力もあってスピードもある……普通に考えたら超脅威的なモンスターだよな。でも、ザハークらすれば丁度良い攻撃をしてくるサンドバッグぐらいにしか思ってないだろうな)


そこそこ付き合いが長くなってきたソウスケにはザハークの表情に、どんな感情が含まれているのか解る。


(あれはある程度自分と殴り合えるからちょっと楽しいって感じの笑顔だな。もっと本気で戦ってる時は凶器的な笑みを浮かべるだろうし)


自分に襲い掛かって来るレッドゴーレムを水の刃で倒しながらザハークとスカーレットゴーレムの戦いを観察し続ける。


「……やっぱりゴーレムってロケットパンチ出来るのは当たり前みたいだな」


大抵のゴーレムは拳を飛ばすことが出来、失った部分は周囲から体と同じ素材を吸収して再生する。

なので放とうと思えば何発でもロケットパンチで攻撃出来る。


ただ、ある程度攻撃に速さを持っている者からすれば、その間は大きな隙となる。


(だからって再生が終わるのを持つってのもいかがなものかと思うんだけどな)


丁度良いサンドバッグが見つかったザハークをスカーレットゴーレムが戦い続ける限り戦闘を続け……魔力が切れて再生出来なくなり、ようやく戦いが終わった。


「ふむ、中々に楽しむことが出来たな」


「そりゃ良かったな。とりあえず魔石だけは回収してくれ。あとは収納の中に入れておくから」


「分かった」


体の一部が砕ける度に限界まで再生を続けたのでスカーレットゴーレムの素材は丸々一体分より多く手に入った。

ゴーレム系の素材は主に防具の素材として使われるが、粉末にすれば武器の資材としても使える。


「レッドゴーレムの素材も手に入ったし、今度は防具を中心的に造ってみるかな」


「防具か……俺はまだそこまで器用では無いから武器メインだな」


防具を造るには武器を造るのとはまた別の技術が必要になり、まだザハークには少々技術力が足りない。


「モンスターとは良く遭遇するし、ルージュバードと遭遇するのもそう遠くないかもな」


「依頼の品は早めに見つけておいて損は無いですからね」


「俺はスカーレットゴーレムの様なモンスターと戦えれば満足だ。ところで、今日も見つからなかったらどうするのだ?」


現在の時刻は既に昼過ぎ。

朝起きてから探索を続けているが、ルージュバードを全く発見出来ないソウスケ達。


「そうだなぁ……何時間探し続けても見つからないなら、気分転換に一日ぐらいのんびりするのも有りだな」


「それなら私は錬金術の訓練ですね」


「いや、普通に街を観光しても良いんだからな」


そう言いながらもソウスケはその休日を鍛冶に当てようと考えている。

それはザハークも同じで、スカーレットゴーレムの素材を使って何かしらの武器を造ろうと決めている。


「そう、ですか・・・・・・そうですね。偶には一日ぐらいゆっくりするのも良いですね」


「そうだよ。俺の鍛冶は趣味みたいなものだからあれだけどさ」


趣味と言うには腕が並を超えている。

ただ、ミレアナも錬金術や木工にそこまで強い意識を置いているわけでは無い。


一緒に錬金術を行う時にミレアナの表情があまりにも真剣過ぎるので、ソウスケはあまりリラックス出来ていないのではと勝手に勘違いしている。


「とりあえず夕方までは探索を続けるつもりだ」


ソウスケ達のスタミナは底無しであり、モンスターとの連戦が続いても問題無しにルージュバードの探索を続ける。

ただ、結局その日もルージュバードを見つけることが出来ず、一度街に戻ることになった。

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