四百四十三話 俺達にとって有利
「ふむ、どれも大したこと無いな」
「いやいや、リザードマンって基本的にCランクのモンスターだからな。弱くは無いんだぞ」
火山付近に向かう道中、何度かモンスターに襲われそうになったが、特に手こずるモンスターは現れなかった。
その中でも一番強かったモンスターがリザードマンだったのだが、ゴブリンプログラップラーの様なザハークが満足するモンスターとは遭遇しなかった。
「リザードマンジェネラルやキングがいれば楽しめたんだがな」
「ここは難易度が高いダンジョンの中って訳じゃ無いんだ。そんな簡単にホイホイとジェネラルやキング級のモンスターが現れる訳無いだろ」
難易度が高いダンジョンの中であっても、そう簡単にキング種が現れることは無い。
対人戦のレベルを高めつつあるザハークからすれば戦い方が野生的な人型のモンスターなど隙だらけであり、基本的に相手にならない。
「まっ、リザードマンの素材や魔石は鍛冶の材料になるから手に入るに越したことはないんだけどな」
「そういえば最近は鍛冶を行っていなかったな。腕が鈍ってしまう前に何か造りたい」
「それもそうだなぁ……今回の依頼はそんな難しいくないから、依頼の合間に鍛冶ギルドの鍛冶場を借りて武器を造るか」
ソウスケとしても武器を造るのは楽しく、飽きることが無い。
そして緊張感が無い様子で話し続けている間に森の中を抜けだし、火山付近へと到着。
森から抜け出した瞬間、ソウスケ達の体に熱さがゆったりと襲ってくる。
「……流石火山に近い場所なだけあって暑いな」
「そうですか? 私はそこまで暑さを感じませんが?」
「そうなのか? 俺もソウスケさんと同様に暑さを感じるのだが……もしかしてエルフは暑さに強いのか?」
「ん~~~……確かに一年通して暖かい場所で暮らしていましたので、ある程度の暑さには慣れているかのかもしれません」
ミレアナの考えは正しく、エルフやハイ・エルフは一年通してあまり気温が変わらない森の中を拠点とすることが多い。
そこは大抵気温が平均と比べて高く、暑さには耐性がある。
ただし、寒さには少々弱い。
初めて極寒の地で冒険するエルフの冒険者はその寒さに驚愕し、慣れるまでに時間が掛かる。
「もう殆ど周囲に木々が無いから見える部分は丸裸だな」
高低差はあるので見える景色全てが丸裸では無いが、それでもソウスケ達の眼には他の冒険者達の姿が映っている。
「さてと。のんびりルージュバードを探していくか」
「そうですね。数日もあれば見つかるでしょう」
「俺としてはやはり強いモンスターと遭遇したいものだ」
何度も聞くザハークの願望に対し、ソウスケは直感的に自分達が強敵と認識出来るモンスターと遭遇するだろうと感じていた。
そしてルージュバードの散策を始めてから一日が終わったが、結局見つけることは出来なかった。
「案外見つからなかったな」
「そうですね。ただ、生息範囲が火山付近とはいってもかなり広いですし、簡単に見つかりはしないのかもしれませんね」
今日の昼間に倒したリザードマンの肉を串に刺して焼きながら夕食の準備を行う。
「火山付近に生息しているモンスターだからか、火属性のモンスターが多かったな」
ヒートスライム、フレイムバッファロー、レッドリザードマン、レッドゴーレム。
種族はバラバラだが、火属性を持つという点は一種。
だが、その分弱点はもろバレ。
水の魔力が含まれている攻撃は通常の攻撃よりも高威力になり、ゴーレムの様な防御力が高いモンスターであっても攻撃が通る。
「俺達にとっては有利に戦えるモンスターばかりだな、ここは」
「あぁ~~~……確かにそうかもな」
ソウスケ、ミレアナ、ザハークの三人は全員水魔法が得意であり、水の魔力を纏った攻撃も難無く行える。
「接近戦に関してはザハークがまともに戦える相手はいないだろ」
「……うむ、そうみたいだな」
水の魔力を纏ったそこそこ本気パンチでレッドゴーレムを一発で倒してしまったザハーク。
その威力を考えると、ザハークとまともに接近戦を行えるモンスターはこの火山で限りなく少ない。
(そもそもゴーレム系だと全くザハークのスピードの付いていけてない。空を飛ぶ系のモンスターならそう簡単に攻撃は当たらないかもしれないけど、相手の攻撃もザハークにとっては大したダメージでは無さそうだし……まっ、俺としてはささとルージュバードが見つかれば文句ないんだけどな)
ある程度の強さを持つモンスターと戦うのはソウスケも楽しみではあるが、ハプニングが起こらないならそれはそれで構わない。
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