四百三十二話 ハマる理由が解る
「もう……たかが指名料にこんな大金を払わなくても良いのに」
「ん~~……そうかもいれないけど、ミリウスさんはとても話しやすいなって感じたから、とりあえず今日は帰るまでミリウスさんと話したいって思ったんだ」
「嬉しいこと言ってくれるわね。でも、金貨三十枚なんて冒険者でもそう簡単には稼げないんじゃないの?」
ソウスケがただ者では無いということは解った。
ただ、金貨三十枚を稼ぐのが容易では無いのも知っている。
事実、金貨三十枚を稼ぐのは大変だ。稼ぐことは出来たとしても、パーティーの宿泊費や食費等に消えてしまう。
個人で遊ぶ金貨三十枚を稼ごうと思うと、中々にハードな依頼を達成しなければならない。
「えっとねぇ……あれだよ。ダンジョンって結構夢がある場所なんだよ」
「ダンジョンって降りて行けば行くほどモンスターが強くなる場所よね」
「そういう場所だね。でも、降りて行けば行くほど宝箱の中身も良いのが入ってるんだ。勿論銀貨や金貨、偶に白金貨も入ってる」
「それは凄いわね!!」
宝箱から白金貨が手に入る。その情報にミリウスは素で驚いた。
白金貨一枚あれば、贅沢な暮らしを控えると一年は問題無く暮らせる。
もちろん冒険者や商人などは話が別になり、一般的な平民であればもっと長い間不自由無く暮らせることが出来る。
ただ、それほどまでに白金貨一枚は大金なのだ。
一般職と比べて一日に稼ぐ金額が高い嬢であっても、一日に白金貨一枚を超える日はそうそう無い。
「俺のパーティーは皆優秀だから、あんまり装備品を消耗することも無い。だから依頼を達成して得た金額から次回に使うお金とか引く必要が無いんですよ」
「そうなのね……ねぇ、今までの冒険の中でどんな冒険が一番ドキドキした?」
別に惚れたわけでは無い。ただ、完全に興味を持ってしまった。
自分は今仕事の顔になっているのだろうか? 絶対になっていないとミリウスは解ってしまう。
(本当に不思議な子ね。多分私は今子供の様な顔をしてるでしょうね)
ただ、そうなってっしまう程にソウスケという冒険者を知りたいと思ってしまった。
それからソウスケは何本かボトルを頼み、ミリウスに話せる程度まで自身の冒険譚を話す。
「それじゃ、そろそろ帰るよ。結構眠くなってきたからね」
「そう、それは残念ね。それにしても……結構お酒強いのね」
「あぁ~~……そういう体質だったみたいだね」
ソウスケは現在指輪上の蛇腹剣を身に着けており、その中にはアルコール耐性というスキルも有している。
なので初めて酒を呑むソウスケでもある程度の度数ならば酔うことは無い。
「ねぇ、また来てくれる?」
「この街には依頼で立ち寄ったんだ。出る前にはもう一度来るよ」
そう告げて会計を済ませ、ソウスケは店から出て行った。
(あの子が有名になれば、私はあの子の相手をしたことがあるって自慢出来そうね)
今はまだそこまで広がっていないが、いずれ多くの者が知るようになる。
そんな有名な冒険者になるソウスケのイメージがミリウスの頭の中に浮かんだ。
(でも、あの子大丈夫かしら?)
見かけによらず強いとは思う。
ただ、ソウスケはこの街ではあまり良くない噂を持つ男にある意味喧嘩を売ってしまった。
(・・・・・・大丈夫よね。そもそもソウスケには強いお仲間がいるのだし)
ソウスケが店を出た後、ミリウスは直ぐにプロの表情にって接客を続けた。
「はぁ~~~……良い時間だったな。娼婦じゃ無くて嬢にハマってしまう人がいるのも解かる時間だったな」
今日のひと時に払ったお金は一般人から見れば十分にハマっている人の金額。
ただ、ソウスケには確かな余裕と自制心を持っている。なので本気でハマってしまう事はこれからも無い。
「というか、お酒って結構美味しいんだな」
今日一夜でソウスケは嬢よりも酒にハマりそうになっていた。
ただ、そんな鼻歌を歌いだしそうな気分を壊そうとする影がソウスケに近づいていた。
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