四百二十七話 夜に行く場所といえば
街を散策しながら飯をつまみ、そして宿を取って夕食を食べ終えたソウスケは一人で夜の街を散策していた。
「昼間は活気があって良かったけど、こういう夜の静かさも良いものだよな」
今回訪れた街、フレイルスでは朝から夕方にかけて基本的に暑いが、夜になれば丁度良い気温になる。
ソウスケといては程よく涼しいと感じる温度だ。
(さて、何となく夜の街に出てみたのは良いんだけど……やっぱり店は何処も閉まっているよな)
時間は既に九時を過ぎており、露店は全て閉まっている。
他の武器屋や服屋も、もうすぐ閉店といった感じで中に入って直ぐに追い出される。
(こんな時間に空いてる店は酒場と……まぁ、本当の意味で夜の街しか相手無いだろうな)
今日は特にそういう気分でも無いのだが、空いている店が殆ど無いので自然と足を運ぶ。
「ん~~~……相変わらずキラキラといてるなぁ~」
そしてやって来たのは夜の街、歓楽街。
この場所だけは夜からが本番。なので人々の喧騒は絶えず、女性が漂わせる危ない香りもあちらこちらから匂う。
(人によっては気持ち悪くなるかもしれないけど、俺としては別に嫌いでは無い)
普段ならソウスケに絡んで来そうな人物も多い歓楽街だが、ここは自分の欲望を満たす街。
基本的にそんな自分の時間を削ってソウスケに絡もうとする人物はいない。
(折角来たんだしどこか店に入ろうとは思うんだけど……どの店に入ろうか)
格好はそこそこしっかりといているソウスケに声を掛けるボーイや女性はいるが、今のところ全て断り続けている。
ボーイからは少々胡散臭さ感じ取れ、女性の容姿はまばらだがソウスケが付いて行っても良いかもしれないと思える人はいない。
(というか、付いて行くならばまともな店に行きたいんだよな)
実際に中に入ってみないと分からないが、大量の金を持っているソウスケでもぼったくりには引っ掛かりたくない。
「……随分と綺麗な店だな」
ソウスケの目に留まった一つの店。
外見は下品と感じない程に装飾が施されており、扉の前にはある程度対人戦が行えるボーイが立っている。
興味を持ったソウスケは扉の前に立つボーイに声を掛けた。
「お兄さん、この店って会員制だったりする?」
「いや、別にそういうものは無い。人によってはV特別待遇を受ける場合もある。ただ……ここは他と比べて高いぞ? 金は持っているのか?」
「ある程度はね。とりあえずこれで足りる?」
そう言いながらソウスケは白金貨三枚をボーイに見せた。
「ッ!!?? これは……君は、もしかして貴族の子息なのか?」
「いいや、そんな者じゃないよ。でも、金を得られる技術はちゃんと持ってるよ。なんなら本物かどうか確かめても良いですよ」
ソウスケから白金貨三枚を受け取ったボーイはレベルは低いが鑑定のスキルを使えるので一応調べた。
(……本物だ。こんな子供が白金貨三枚を……やはり貴族の子息ではないのか? この店にそういった人達が来ることは珍しく無い。しかし貴族の子息では無い……それならばこの子はいったい何者なんだ?)
ボーイの頭の中には多くのはてなマークが浮かぶが、確かな答えが思い浮かぶことは無かった。
「本物、ですね。白金貨三枚もあれば最高の一夜が過ごせるかと思います」
「最高の一夜、か……それはちょっと楽しみだな」
今夜だけで白金貨三枚を使うかは分からないが、それでも風俗以外で体験する最高の一夜という単語には興味がある思春期真っ只中のソウスケ。
(白金貨って日本円だと一億円だったもんな。異世界だからそこら辺の値段が一桁ぐらい違うのかもしれないけど……まっ、多分一夜で白金貨三枚を使うことは無いだろうな)
心臓をドキドキさせながら店名の中に入り、一つのテーブルへと案内される。
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