四百二十六話 今回は行かない

「何事も無く進めるって良いよな」


「そうですね」


「そうか? モンスターには何度か襲撃されたじゃないか」


領主からの指名依頼を受けたソウスケ達はルージュバードが生息する地域へと足を運ぶ。

そいて出発から数日経ち、その間にソウスケ達は何度かモンスターから襲撃を受けたが、三人が手こずるようなモンスターは現れず、ほぼほぼ瞬殺で撃退いてしまう。


「いや、確かにモンスターには襲撃されたけど盗賊には襲われて無いだろ。それが俺的には無事って感覚なんだよ。それに襲ってきたモンスターだって大して強く無かったしさ」


「そうだな。まぁ……俺はそこに関して少々不満だったが」


「ザハークが満足出来る様なモンスターはそうそう現れませんよ」


オーガの希少種であるザハークが満足出来るモンスターの基準は最低でもCランク。

確かにCランクのモンスターであれば遭遇するのはそこまで珍しくは無いが、それでもそう簡単にほいほい遭遇したら大半の人間が襲われて死んでしまう。


「ミレアナの言う通りだな。それに今回討伐対象のモンスターだってランクはCなんだ。ザハークがそこまで手こずる様な強さは持っていないと思うぞ」


「むぅ……そうか。空を飛ぶとはいえ、Cランク程度ではそんなものか」


「そうだろうな。さて、そろそろ目的の街が見えてきたな」


ルージュバードが生息する森に近い街、バース。

この街の近くは平均温度が他の地域と比べて高く、それは離れた場所に火山が存在するからという明確な理由があり、稀に火属性のモンスターが森に降りてくる場合がある。


ルージュバードも本来は火属性に分類されるモンスターだが、大した火力は無い。


問に近づくにつれてザハークの存在に驚く人達が増えるが、それでも従魔の輪を腕に身に着けている事で人々は落ち着きを取り戻す。


「……」


「どうしたんだザハーク、そんなに火山の方に目を向けて」


「いや、単純にあそこに向かえば強いモンスターと出会えるかと思ってな」


「お前の頭は強者と戦う事で一杯だな。まぁ……火属性に特化したモンスターがいそうではあるな」


中に入れるまで列に並んで待つ途中でザハークの興味は火山で生息するモンスターに移る。

ザハークの予想は正しく、ソウスケ達が今回やって来た街から一番近い地点の火山には高ランクのモンスターが存在する。


「実際に存在すると思いますよ。ただ、火属性に特化したモンスターが相手なら私達は優位に戦えそうですね」


「それはなんで・・・・・・あぁ、なるほどなるほど。確かにそうかもな」


ソウスケは現在使える魔法の中で特別何が得意というものは無いが、それでも水龍の蒼剣を装備する事で水属性が含まれる攻撃の威力は格段に上昇する。


そしてザハークとミレアナも水属性を含む攻撃は得意であり、接近戦に特化しているザハークも水魔法に関してはそこそこの腕を持っている。


「なんだ? それでは簡単に倒せてしまうということか?」


「そんな簡単な話では無いですけど、相手の得意技に関いては容易に対処出来るでしょうし……戦いを有利に進められること自体に変わりはありませんね」


「やっぱそうだな。火山、か……とりあえず準備無しで挑んで良い場所ではなさそうだし、今回探索するのは無しだ」


「そうか……焦ったところで良いことは無い。今回は我慢するとしよう」


ルージュバードの討伐など直ぐに終わってしまうだろうと思っているザハークとしては、時間が余れば依頼期間ギリギリまで火山地帯に生息するモンスターと戦えると考えていた。


しかしソウスケの言う通り準備無しで挑むのは良くないと思い、今回の依頼期間中に火山地帯を散策することは諦めた。


「さて、そろそろ俺達の番だ。今日はどうする?」


「一番先に宿を取ってからギルドに向かい、ルージュバードに関しての情報収集とかですかね」


「俺は美味い飯が食べたい」


「オーケーオーケー、宿を取ってギルドに行って情報収集を終えたら、街を散策しながら飯をつまもう」

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