四百二十五話 指名依頼だからこそ

ソウスケが領主からの指名依頼に対し、依頼を受ける条件を提出した翌日の朝に返答が返ってきた。


「……全く問題無いって感じだな」


送られてきた手紙を読んだソウスケはため息を一つ吐き、ベットに倒れ込む。


「なぁ、なんで俺達に頼んだと思う?」


「……確証はありませんが、色々と噂が飛んでいるせいではないですか? ザハークはその見た目だけで接近戦に特化した強者という事が解りますし、私はエルフなので魔法や弓に優れた遠距離タイプ。そしてその二人を連れて歩くソウスケさんにも何かしらの能力があると思い、私達を指名してきたのでしょう」


「あぁ~~~……なるほどな。まぁ、確かに俺が二人には無い何かしらの能力を持っていると考えてる人がいてもおかしくは無いか」


事実としてソウスケには二人が持っていない蛇腹剣という規格外なチート武器を有している。

そしてソウスケ自身も神から流石ったスキルを実戦で強化していき、通常では考えられない程の連戦を積んで経験値も貯まっている。


「それに、私達はEランクなのでそこまで報酬金額に対して交渉してくるとは思っていない筈です」


「えっ、指名依頼の報酬金額って交渉出来るの?」


「寧ろ指名依頼だからこそ交渉出来るのかと思います。依頼者もある程度依頼内容を考えて報酬額を決めているとは思いますが、それでもそれを受けるか受けないかの権利は基本的に冒険者にあります」


「だからその報酬内容によっては、これぐらいの報酬額なら受けても良いって返すことが出来るのか……なるほどねぇ~~。まぁでも、今回は別に報酬内容に関して不満があるわけでは無いから別に良いか」


既に大量のお金を所持しており、冒険者活動以外でも収入源がある。

そして稼ごうと思えば一気に稼ぐことが出来る実力。


よっぽど報酬内容が低すぎない限り、ソウスケが依頼を断ることは依頼者が面倒そうな人でなければ無い。


「そんで期限は三週間後まで……ルージュバードが生息している場所まで馬車で五日ほどか。まっ、期間は妥当だな」


「移動時間は馬車での計算ですし、私達がある程度本気を出して移動すればもっと縮まるかと」


「それな。それに俺達には空飛ぶ絨毯があるから移動時間は何とでもなる。問題はルージュバードを見つけてあまり羽を傷付けずに持って帰れるか……今回はあんまりザハークの出番は無さそうだな」


「そ、そうですね。ザハークも遠距離攻撃が出来ない訳では無いですけど、それでも私達程器用に出来ませんし……前回ゴブリンプログラップラーと戦ったので今回の依頼ではそこまで満足出来る様な戦いは無くても良いのではないですか?」


ミレアナの言う通り、ザハークは前回ゴブリンプログラップラーとの戦いに対し、そこそこ満足していた。

しかし実際のところ本当にそこそこという程度であり、心の底から満足はしていない。


それはソウスケも何となく解っているが、それでも今回の指名依頼でザハークが暴れる場面はあまり無いなと思っている。


もしルージュバードを探している最中や戦闘中に体が大きいモンスターが現れればザハークに任せる。

とりあえずそれはソウスケの中で確定した。


「使う武器は……そうだな。この前造ったあれでも試すか」


「この前造ったあれとは……もしかしてあの細い奴ですか?」


「そうだ。羽が無事っていうのは大前提だけど、その羽に血が付いてるのもアウトだと思うんだよ。洗い流せるかもしれないけど……どう思う?」


「そう、ですね……私もそれを使って倒すのに賛成です。血は洗い流せても匂いは中々取れないかもしれないですからね」


「だろ。よし、倒し方も決まった。そろそろ出発するか」


時間は正午より二時間ほど前。普通の冒険者ならば既に依頼を受理して出発している。


どう考えても今から依頼達成の為に出発するのは遅いが……ソウスケ達にその常識は通用しない。

ささっと準備を整えて街から出発する。

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