四百二十四話 後は待つだけ

「はぁ~~~~……マジで災難だ」


基本的には受けたくない。受けないという選択肢が無いわけでは無い。

だが、それはそれで後々面倒になりそうな予感がするソウスケは領主からの指名依頼を受け、それを報告しにギルドへと向かう。


「まぁ……何と言うか、そこまで気を落とすことは無いんじゃないか? 冒険者としては悪い内容では無いのだろう」


「それはそうだよ。レアレス辺りなら小躍りしそうな程に喜ぶだろうな。でも、俺は基本的にそういった依頼を受けたくないんだよ。依頼額が低かったらマジで断ってたと思う」


依頼内容はルージュバードの羽を大量に持ち帰る事。

基本的には一羽を狩れば問題無い。だが、ルージュバードのランクはC。そして熱帯地に生息する訳では無いのだが、火系統に当てはまる鳥系のモンスター。


「確か金貨四十枚でしたよね」


「そう、まぁ……その中に移動費は道中の食費とかが含まれてるんだろうけど」


Cランクを一体討伐するだけで金貨四十枚。

移動費や食費等を引いても三十枚以上の金貨が報酬金額として懐に入る。


だが、ソウスケ達の場合は既に移動費は食費に宿泊費が気にしなくて良い程、懐に貯まっている。

なので感覚としては金貨四十枚が報酬として全て入る……のだが、ソウスケの表情はあまり良いものでは無い。


(金貨が四十枚って事は……日本円にして四千万円。日本にいた頃なら、そんな金額が手に入ると分れば小躍りしてしまいそうな気がするけど……こっちの世界に来てかなり金銭感覚が麻痺してるからなぁ)


この世界でも金貨四十枚はそこそこの大金なのだが、ソウスケはあまり大金が手に入るという感覚が無い。


「Cランクのモンスター一体を討伐するだけ……まぁ、羽はしっかりと残しておかないとあれだけど、それだけで金貨四十枚が手に入るなら、割と美味い依頼なのか?」


「そう、ですねぇ……普通に考えれば美味しい依頼ではあると思います。ただ、何か裏があるように疑ってしまいますね」


一口にCランクと言っても幅がる。

だが、その中でもルージュバードはそこまでの強さを持っているという訳では無い。


「もしかしたら、そのルージュバードが生息する地帯にルージュバードより強いモンスターが生息しているから少々高いのではないか?」


「あぁ……そういう感じか。なるほどな、無きにしも非ずな理由だ」


もやもやと残る疑問が薄れ始め、ギルド前に着いたソウスケは中へと入って受付の方へと向かう。


「すいません、この件に関して対応をお願いします」


「これは……かしこまりました」


「ありがとうございます。それで、一応受けようと思います」


「そうですかっ!! ありがとうございます」


領主からの指名依頼という事なので、ギルドとしてはあまりソウスケに断って欲しく無いものだったので、受けてくれると分ってほっと一安心する。


「ですが、これが依頼を受ける条件です。特に難しい事では無いと思いますけど……これが依頼を受ける条件です」


「えっと……か、かしこまりました。おそらく明日にはお返事が来ると思いますので、もう少しこちらの街で滞在していただいても宜しいですか?」


「大丈夫です。それじゃ、確認が取れたらまた宿の方にお願いします」


今日の目的が済んだソウスケは直ぐにギルドから出た。

昼間であっても、ギルドの中には多少の冒険者が存在する。


そんな冒険者達の中にはミレアナ様な美女と一緒に行動するソウスケに嫉妬する者もいたが、ソウスケに絡もうとしてミレアナやザハークに絡んだ本人がぶっ飛ばされたそこそこ有名なので、そんな無謀な真似をする者はいなかった。


「やっぱりギルドには人が少ない時間帯に行くに限るな」


「そうですね、やっぱり人が少なければそれだけ私達に集まる視線も少なくなりますし」


ギルドでの用事を済ませたソウスケはとりあえず家でのんびりと返事を待つことにする。

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