四百二十三話 断らない方が良さそうだ

宿に戻ったソウスケはそのままベットへと倒れ込み、今後どうしようかを考える。


「ゴブリンパラディンの死体を喰らった結果はどうでした?」


「ん? あぁ……まぁ、基本的に問題は無かったよ。ちゃんと聖剣術の技は使えていたし……不備は無い。ただ、ゴブリンパラディンが持っていた長剣の名前は……ははっ、ちょっと面白かったけどな」


「いったいどういう名前だったのですか?」


「あの長剣、一応ゴブリンパラディンが持っていたからか、多分普通の長剣が聖剣へと変化したんだよ。それでその聖剣の名前なんだけど……醜鬼の聖剣だってさ」


「……何と言いますか、らしい名の聖剣ですね」


ゴブリンやオークは女性の敵であり、勿論ミレアナにとっても冷たい視線を向けるのに十分な理由を持つもんすたーなので、その名はピッタリであると思った。


「けど、俺がゴブリンパラディンを倒したからか、醜鬼の聖剣っていう名前の聖剣のくせにゴブリンキラーの効果が付いていたんだよ」


ゴブリンが持っていた武器、名前も醜鬼とごぶりんを表す様な名前が付いているのにも関わらず、ゴブリンキラーの効果が付与されていた。


それがソウスケには理解出来ない性能だった。


「元々こういう効果が付いていたのかどうかは解らないけど、基本的にあり得なく無いか?」


「……いえ、ドラゴンの素材を使って武器を造った場合、ドラゴンキラーの効果が付与されることがあります。なのでもしかしたらですが、その聖剣はゴブリンパラディンがゴブリンの時から使っている物であり、縄張り争い等で同族のゴブリンと戦っていれば、その剣にはゴブリンの血が染みついているでしょう」


「派閥同士の争いみたいな感じか……まぁ、無くはない現象か。だからゴブリンキラーの効果が……でも、あんまり使う機会は無いかなって思う」


「そうですねぇ……今回の件の様に大量のゴブリンと戦う機会や、聖属性の攻撃の威力を上げなければならない時以外はグラディウスや蛇腹剣で十分だと思いますよ。それにいぞという局面では水龍の蒼剣やバアゼブレイヤがあるのでわざわざ使う必要は無いかと」


長剣以外にもソウスケは槍や短剣、斧も使える。

ダンジョンで手に入れた武器の中にはそこそこのレア度を持つ武器もあるので、少々嫌なオーラを放っている醜鬼の聖剣を使う必要は殆ど無いと二人は判断した。


「それとソウスケさん、少し前にギルドの職員がやって来てこの封筒を置いて行かれました。そして絶対に呼んで欲しいとのことです」


「ギルドから……もしかして、今回の件をレアレスさん達はやっぱりしっかりと伝えてしまったって事か?」


「どうでしょうか。あまり約束を破るような方達には見えませんが」


レアレス達はなるべくソウスケには触れない様に今回の件の報告書をギルドへと提出した。

だが、そもそも今回ソウスケ達に届いた手紙はその件を知ったからというものでは無い。


「とりあえず開けて読まないと。なになに……えっと……ほ、ほぅ・・・・・・マジ、でか」


「だ、大丈夫ですかソウスケさん? あまり表情がよろしく無いようですが」


「えっとだなぁ……簡単に言えば、この街の領主から指名依頼だ」


「ッ!? そ、それは……ど、どういたしますか?」


予想外の内容にミレアナも直ぐにこうした方が良いのではという提案が浮かばなかった。


「お、俺としてはあんまり受けたくないんだが……この街の領主の爵位ってなんだっけ?」


「伯爵です。貴族としては決して低くない爵位を持っている方ですね」


「は、伯爵かぁ・・・・・・うん、断るという選択肢は除外した方が良さそうだな」


手紙にはとあるモンスターの羽が欲しいとのことだった。

指名依頼といえど、断ることは可能なのだがソウスケはローディア商会の現トップであるトーラスを訪ねにやって来ることがあるので、あまり領主に悪い印象は与えたくないと思っている。


(ん~~~……今回の依頼の件を他の貴族に広めないという事を了承するなら受けても良いかな)


条件付きなら受けても良いと思い、ソウスケはその条件を伝える為にミレアナとザハークと一緒にギルドへと向かう。

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