四百二十八話 やっぱり高いと思う

(なんかこう……ドキドキするけど、落ち着けるような場所って感じがする)


店の中は二階建てになっており、二階の小さな舞台で楽器を得意とする従業員が客に対して落ち着ける曲を流す。

そして多くの嬢達が男性の話し相手となり、相手をその気にさせるのが上手い嬢は高い酒を客に買ってもらう。


(うわぁ……凄いデレデレしちゃってるな。というかテーブルの上に空いたボトルがいっぱい……あの人いったい幾ら使ったんだ?)


この店のランクがそこそこ高いという事はソウスケにも何となく分かる。

なので自分以外の客が何本もボトルを空け、嬢にデレデレした様子を見てると全く関わりの無い人間であっても少々心配に思う。


(もしかして凄い金持ちの人なのか? いや、そもそも金持ちの人しか来ないか。でも……あんだけボトル空けてたらかなり散財しているよなぁ……大丈夫か?)


とりあえずどんなメニューがあるのかと思い、メニュー表を見ると……そこには小金持ちになっているソウスケでも思わず目が点になるような額が書かれていた。


「こ、これはぁ……中々のお値段だな」


一番低くて銀貨数枚からのスタート。つまり日本円で数万円の値段になり、一番高いボトルだと白金貨を使う値段となる。

流石にそこまで高いボトルは嬢に頼まれても買ってしまう人はおらず、嬢もそこまで高いボトルを飲めるほど喉が丈夫でない人が多い。


「こんばんわ、隣失礼しますね」


「あ、はい。よろしく……お願いします」


ソウスケの担当になった嬢が現れ、ゆっくりと隣に座る。

その嬢の顔を見たソウスケの顔は少々固まっていた。


今まで容姿のレベルが高い女性を何度も見てきたが、目の前の女性に見惚れてしまう。


「えっと……そ、ソウスケです」


「ソウスケ君ね。私はミリウスよ、よろしくね」


「は、はい。よろしくお願いします」


光が反射して更に綺麗に見えるストレートの金髪に人の目を惹きつけるような蒼い目。

そしてスタイルが良いという言葉では足りない程パーフェクトなボディー。


そしてソウスケが今まで見た事が無い程の妖艶さ。


(……とりあえず一言、エロい)


来ている服もミリウスのスタイルを強調するようなデザインになっており、この姿を見て発情しない男は特殊な性癖を持っているか、既に枯れ果てているかのどちらかだろうとしか思えないソウスケ。


「ソウスケ君は……どんな勉強をしてるのかしら?」


「えっと、勉強はしてないです。自分は冒険者なんで」


「あらそうなのね。それなら今日はお仕事帰り?」


ソウスケの返答に慣れたように返すミリウスだが、内心では少々驚いていた。


(もしかしたらとは思っていたけど、本当に冒険者なのね。確かに貴族の子息には見えないけど……でも、あんまりイメージが持てないわね)


まだまだ他者からは強者のイメージが持たれない。

なのでミリウスがソウスケの顔や体格を見て冒険者と思えないのは仕方がない。


「いえ、仕事内容でこっちに用があって今日着いたんです。でも、あんまり寝るような気分じゃ無くて何となく宿から出てプラプラと歩いてました」


「そしたら歓楽街に来てしまった。そんなところかしら」


「そう、ですね。それでなんとなくここのお店が気になって……入って来ました」


「それは……中々珍しいパターンね」


中々出会わないタイプの客にミリウスは更にソウスケの財布の中身が心配になる。

それは強者で無いイコール、金を持っていないというイメージに繋がってしまうからだ。


しかし店のボーイは客を見極める目をある程度持っていると知っているのでミリウスはメニュー表をゆっくりとソウスケの目の前に置く。


「ソウスケ君はお酒が飲めるかしら?」


「実はまだ飲んだことが無くて……えっと、あまり度数が高く無い奴ってありますか?」


「あまり度数が高く無いお酒ね……これなんてどうかしら? お値段もそこまで高く無いし、どうかしら」


ミリウスが提案したお酒は度数が三度程度のお酒。

だが、その値段はなんと金貨二枚、日本円にして二百万……ぶっとんだ金額である。


しかしソウスケは今日ボーイに対して見せた白金貨三枚を使ってしまっても良いと思っているので、そのお酒を頼むのに全く抵抗は無かった。


「良いですね。それじゃあ、それを飲んでみます」


全く迷うことなくサラッと頼んだソウスケにミリウスは表情に出さない程度に驚く。

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