四百二十一話 評価終了

「……ってな感じか」


「そうね。やはりというのはあの子達に失礼だけど、グランほどの将来性を感じる子はいなかったわね」


「グラン君はかなり特別な子……という言い方は彼の努力に失礼だね。彼は必ず上に上ることが出来る力を秘めている。僕達がそう確信出来るルーキーはそう多く無いだろう」


「ダイアの言う通りだ。アーガスも実力だけなら良い線を言ってるんだが……やっぱり冷静さが足りない。冷静さを無視しても依頼を達成出来るほど実力が高い訳でも無い。というか、今回のあれは……流石に減点対象だろうな」


ギルドがどのようにして冒険者を評価しているのかを多少知っているレアレス達は、今回のアーガスの愚行は完全に減点対象だと解っていた。


(格上のモンスターを倒して評価を上げたい。その気持ちは解る、凄く解るんだが……流石にあの結果ではなぁ。もし仮にあのままゴブリンパラディンと戦ってギリギリ勝ったのなら、また評価も変わってくるんだが……全く相手にされていなかったからな)


レアレス自身が真っ向から戦ってもまともに戦える自信は無いが、それでもアーガスは無様にやられ過ぎた。


「そ、そうね。勇敢と蛮勇は違うものね。それにゴブリンパラディンが全くアーガス君を殺すつもりが無かったから良かったものの、本気で蹴り飛ばされていたら間違いなく即死だったわ」


「その前にソウスケ君が活躍していたのだし、自分も格上のモンスターを倒して評価を上げようと考えていたんだろう。ただ、流石にその相手が悪すぎたけどね」


今回の偵察依頼の件での内容はEランク冒険者達の将来にも関わるので、なるべく詳細に上に説明しなければならない。


(だがソウスケ君達の件をどう説明するか……上には話さないと言ったが、それでも森にそういう存在が現れたという点は流石に説明しなければならない)


目立つことが好きでないソウスケの願いをなるべく汲み取りたいレアレスだが、ゴブリンパラディン達の存在は上に知らせたかった。


「レアレス、なにを考えているの?」


「あぁ、ゴブリンパラディンと他の二体をどうギルドに報告しようかと思ってね」


「それは確かに報告しておかないといけないわね。でも、なるべくソウスケ君の願いは聞いておかないといけないし」


「……ねぇ、思ったんだけどさ。ソウスケ君は自分があまり目立ちたくないと言ったんだよね。それなら、三体ともミレアナさんと従魔のオーガが倒したという事にしたら良いんじゃないか?」


ソウスケは確かに自分はあまり目立ちたくないし、昇格にも興味が無いと言っていた。

それなら、その活躍をミレアナとザハークに加えるのが一番なのではとダイアは考えた。


「ミレアナさんと従魔であるオーガのザハークなら例えBランクのモンスターを単独で倒してもおかしくは無い……と思うんだよ。どうかな?」


「……そうね。悪くない案だと思うわ。それに加えてソウスケ君とミレアナさんには昇格の意志が無いとギルドに伝えれば良いのだし……うん、私はそれで問題無いと思うわ」


「そうだな俺もそれで問題無いと思う。重要なのはソウスケ君に昇格の意志が無いのとあまり目立たないという事。ミレアナさんとザハークが今以上に目立つかもしれないが……それは今更という話だろう」


レアレスの考えは正しく、ミレアナとザハークはソウスケの存在関係無しに目立っていた。

強く美しいミレアナと、強くナイスガイなザハークの真ん中にいるお陰でソウスケは多くの冒険者達から注目しされる存在となった。


「それに……昇格に興味がない事や、あまり目立ちたくないと思っているソウスケ君には悪いが、これから先どう考えてもあの三人は有名な存在になると思っている」


「でしょうね。接近戦も得意だけど遠距離攻撃に優れたミレアナさんと接近戦に優れた従魔のザハークに、まだEランクなのにBランクモンスターを単独で倒してしまう実力を持つソウスケ君……三人という少ない人数ながら、飛び抜け過ぎた実力を持っている」


「そんな普通は考えられないパーティーが目立たない訳ないですね」


こうしてEランク冒険者達の評価は終わり、後はギルドに報告するだけとなった。

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