四百二十話 頼ってしまう存在
翌日、街へと戻ったレアレス達はその日は一旦休息を取り、次の日にギルドへと報告に行くと決めた。
その晩、レアレス達は宿で今回の依頼の詳細について話し合っていた。
「はぁーーーーー……冒険者やってたらいつかモンスターに殺される日が来るかもしれないとは思っていたが、まさかBランクのモンスター三体に遭遇するとはなぁ」
「いくら強い味方がいるって解っていても、あの状況は絶望しか感じなかったよ」
「同感だね、ゴブリンの大群だけならまだしも、あんな強敵が三体も同時に現れたら……正直後輩の前じゃ無かったら逃げ出してたかもしれないね」
半分本音を語ったダイアに対し、二人は攻める様な言葉を吐かなかった。
強敵に対して背を向ける。それは余程運が良くない限り自ら殺されるような行為だ。
だが、人は誰でも恐怖に打ち勝てるわけでは無く、恥やプライドを捨てて逃げ出したい衝動に駆られることがある。
「たかがゴブリン、されどゴブリンというやつだな。あれ程まで強力なゴブリンがいるとは……頭では分かっていても、実際に目で確かめるまでは体に刻め込めないものだ」
ゴブリンパラディン、プログラップラーというゴブリンの上位種の存在を知らなかったレアレスだが、ゴブリンキングという存在は知っていた。
そのモンスターのランクがBランクということも分かっていた。
だが、実際に見た事があるわけでは無いのでいまひとつその恐怖が解らなかった。
しかし今回の依頼でその恐怖が身に染みて解った。
「まっ、俺達の反省はまた後にしよう。疲れで寝てしまう前にアーガス達の評価だ」
今回の偵察依頼では一緒に行動するEランクの評価をギルドに伝えるのもレアレス達の仕事だった。
「私達の命の恩人であるソウスケ君達の評価はどうするの?」
「どうするもなにも……戦闘面においては完成度が圧倒的に高い。冒険者としての技能や準備も問題無い。昇格試験を資格は十分に持っているが、でも本人たちの昇格の意志は無いと伝える。それで良いんじゃないか?」
「僕もそれで良いと思うよ。群れとの戦闘でも十分に対応していたし、彼らに死角は無いよ」
「それもそうね。それじゃあ次は……グラン君かしら」
今回の依頼で一番活躍していたのはソウスケ達だが、時点で活躍していたグランの評価に入る。
「あれはソウスケ君ほどでは無いが、戦力だけで言えば既にEランクに収まるものでは無いだろう」
「彼の力は相当なものだ。何か特別なスキルを持っているとは聞かないが……もしかしたら素で身体能力が異常に高いのかもしれないね」
「冒険者の技術は平均以上はありそうだし……Dランクへの昇格を推薦しても良いかしら?」
「……いや、まだ早いと俺は思う」
グランの昇格推薦にレアレスは待ったをかける。
確かにグランの身体能力には目を見張るものがある。
人族にしては年齢離れした腕力と脚力を持っており、その力でゴブリンやその上位種を蹴散らしていた。
その戦力は明らかにEランクの枠には収まらない。
だが、グランには一つ足りないことがあるとレアレスは思った。
「確かに戦力だけを考えれば一級品だ。グランはソウスケ君みたいに成り上がることに興味が無いという訳ではなさそうだから、そう遠くない内にランクを駆けあがっていくだろう。というか、うかうかしていたら俺達をサラッと抜くかもしれない。だか、今のあいつには修羅場を潜り抜けるという経験が足りない」
「今回の経験は修羅場と呼べ無いのかい?」
「確かに修羅場と呼べる戦いだったが、それでも隣にはソウスケ君達がいた。その存在がグランにあの状況でも安心感を与えていた」
「……つまり、ソウスケ君達がいない状況で、彼より強いモンスターと戦う経験が必要という事ね」
「そういう事だ。そこら辺は少しギルドと話し合った方が良いな。グランは絶対に伸びる。ギルドも協力してくれる筈だ」
こうしてグランの評価は終わり、続いてアーガス達の評価へと移る。
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