四百十五話 威力は勝っていた
時間にして数分、だがその戦い激しさを増すばかりだった。
聖気を纏った斬撃、ホーリースラッシュを放つゴブリンパラディンに対し、ソウスケは風を纏った斬撃であるウィンドスラッシュを放って迎撃する。
さらに高位の技であるホーリークロスに対し、ソウスケもウィンドクロスで対抗。
聖と風に属性間の相性は無く、単純にお互いの技の威力によって勝負が決まる。
(……粘るな。確かに戦い慣れしているのは確かなんだけど、レベル差では俺の方が上……それほどまでに聖気による身体能力の強化が強いのか?)
ソウスケも蛇腹剣の身体強化を使って二重の効果を発揮していた二ので全力では無い。
しかしそれでも中々勝負がつかない。
(そろそろ剣以外の攻撃も入れていくか)
ゴブリンパラディンの攻撃方法が長剣と盾に対し、ソウスケもグラディウスのみで対抗していた。
それでは中々決着がつかないと思ったソウスケは蹴りや拳も接近戦の最中に繰り出し、距離を取ればウィンドスラッシュだけでは無く、魔力の槍も同時に放つ。
魔力の弾丸や槍は特に詠唱を必要としないので、瞬時に生み出したところで疑問は持たれないだろう。
そう考えていたソウスケだが、その考えは半分合っていてて半分は外れていた。
確かに魔力のみならば瞬時に生み出すことは不可能では無いだろう。
しかし問題は大きさであった。
ファイヤーランスやウィンドランス等のランス系魔法と変わらない大きさの魔力の槍を瞬時に生み出す。
しかもそれを連発して……それはEランクのグラン達やDランクのレアレス達からすれば魔力量が心配になる戦い方である。
だが、ソウスケの魔力量は同レベルの冒険者と比べても多く、底が尽きそうになったとしても蛇腹剣の能力を使えば多少は補えることが出来る。
そしてソウスケの手数が増えた事でゴブリンパラディンは劣勢に追い込まれていく。
過去に追い込まれた経験は幾度もあったが、ゴブリンパラディンになってからはモンスターや人間が相手でも劣勢になったことは無かった。
自分は死ぬかもしれない。そんな嫌な予感を拭い去るためにゴブリンパラディンは残量など一切気にせず、身体強化と聖気に武器強化を全力で使用する。
「おっ、腹は決まったって感じか?」
聖気による武器強化が更に強くなったことを確認したソウスケはチラッとグラディウスに目を向ける。
(ん~~……刃こぼれはしてないけど、少し不安だな)
ゴブリンパラディンが持っている長剣もそこそこの業物であり、お互いの武器に損傷は無い。
しかしそれでもソウスケが心配するほどに長剣に纏う聖気は大きくなり、荒々しくもなっていた。
「どうやらこっちも全力で行った方が良いらしいな」
相手が更に強化するならば自分も更に強化しようと思い、蛇腹剣に宿る身体強化を使用。
更にグラディウスに纏う風を強化し、風から嵐へと変化する。
お互いに最も駆け出しやすい構えを取り、一旦動くのを止めた。
その状況からミレアナ達は次の一戦で勝負が終わると確信する。
ソウスケとゴブリンパラディンが駆け出したのはほぼ同時であり、どちらが不利と言う状況では無かった。
ソウスケはストームスラッシュを、ゴブリンパラディンはセラフィムブレードを放った。
セラフィムブレードはホーリースラッシュの上位互換技であり、その威力は竜種であっても致命傷を与えかねない技だ。
だが・・・・・・今回ばかりは相手が悪かったとしか言えない。
ストームスラッシュとセラフィムブレード、威力だけならばセラフィムブレードがやや勝る。
しかし圧倒的に技を放つ本人の速度が足りなかった。
身体強化を二重に発動したソウスケはセラフィムブレードを超低空姿勢で躱し、ゴブリンパラディンの足元を通り過ぎる瞬間に両足を切断。
そして直ぐに立ち上がり、その胴体を横に一刀両断する。
「ゴブリンにしては……本当に驚かされたよ」
それは紛れもないソウスケの本音であった。
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