四百十三話 本能的な勘で

「ふぅーーーー……まさかウォータードラゴンスパイラルまで使えるとは、少し驚きでした。ゴブリンでも経験を積めばあそこまで実力が上がるものなのですね」


ゴブリンウィザードの討伐を終えたミレアナは死体へと近づき、落ちている杖をクリーンを使用してから拾う。

そしてささっと魔石を回収し、身に着けていた使えそうなマジックアイテムもクリーンを使用してから剥ぎ取った。


「それにしても意外と良い装備を身に付けているものですね。冒険者を殺して奪ったのか……それとも盗賊団を襲撃して奪ったのか。どちらでも良いですが、良くマジックアイテムの用途が解かりますね」


ゴブリンウィザードが身に着けていたマジックアイテムは全て魔力の総量を少々上げ、水魔法の威力を上昇させるなど魔法関連の物ばかり。


(私はソウスケさんの様に鑑定のスキルを持っていないのでゴブリンウィザードがどのようなスキルを有しているのか分かりませんが、もしかしたらソウスケさんと同じく鑑定のスキルを持っていたのでしょうか? それとも、もしかして本能的に自分に合う道具だと察したのか……考えても分かりませんね)


考えても仕方ないと思い、考える事を止めたミレアナ。

しかし二つの考えのうち、片方は合っていた。


ゴブリンウィザードが自分に合うマジックアイテムを選べたのは本能的な勘によるものだった。


「さて、そろそろ終わりのようですね」


SIDEソウスケ


ゴブリンパラディンと向き合うソウスケは表情こそ落ち着いているが、それでも心の中では笑いが堪えられないでいた。


(いやぁ~~、もぉ~~~~、ほんっとにギャグだよな。せめて聖騎士じゃ無くて暗黒騎士になれよ。それならまだに似合ってるのに……ぷっ、なんで聖騎士なんだよ)


ソウスケと向き合うゴブリンパラディンは聖騎士らしく構えを取っており、それらしく様になっている。

だが、そんな構えがよりソウスケを笑いへと誘う。


(はっはっは、構えまで聖騎士ってか。もうこれ以上笑かすなよ)


どうやって攻めていこうか。ソウスケがそう考えていると先にゴブリンパラディンの方から動き出した。

しかしゴブリンプログラップラーの様に最初から全身全霊で挑むわけでは無く、素の状態での全速力で駆け出す。

そして横一線をソウスケのぶちかます。


「うん、流石Bランクだけあってそこそこ速いな」


そう言いながらもソウスケは余裕な表情を崩さずに避ける。

そしてお返しとばかりグラディウスをしたから振り上げて斬撃を放つ。


しかしそれに対してゴブリンパラディンも大して表情を変えることなくバックステップで対処する。


「判断速度も中々……それなら少し遊ぼうか」


そこからはお互いに攻撃と回避を繰り返し、ヒット&アウェイを行い続ける。

時間にして一分程度の話だが、それでもその速度はアーガス達が終えるものでは無く、レアレス達やグランがやっと追える速度だった。


そして途中からお互いに身体強化のスキルを使い、更に剣戟の速度は増す。

だが、それでもお互いに切傷を負う事無く続く。


(……意外だな。身体強化のスキルを使えば切傷が増えていくと思ったんだが、これがまた中々当たらない)


レベルの差だけで言えばソウスケの方が上。

しかし同レベル時の時ならばゴブリンパラディンの方が高い。そういった理由からも現在の剣戟でお互いが切傷を追わない理由となる。


ただ、一つ二人の違う点と言えば、ゴブリンパラディンのは余力を残しつつも全力で動き続けている。

それに対し、ソウスケは先程の言葉通り、感覚としては遊んでいるに近い。


そういったソウスケの表情から焦りだしたゴブリンパラディンは聖剣術のスキルを習得している者のみが纏える力、聖気を剣に纏う。


(これは……聖気って奴か。効果は魔力を纏う事で得る身体強化の上昇や武器の強度や切れ味を上げるか。ただ、聖なる攻撃が弱点の相手には効果が絶大・・・・・・うん、それって自分達を滅ぼす要因にならないのか?)


誰もが思う様な疑問を感じながらも、ソウスケはグラディウスが折れてしまわない様に風の魔力を纏って加速する剣戟に応戦する。

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