四百二十一話 薦められる依頼

ギルド内に入ったソウスケとミレアナは依頼掲示板を適当に見ていくが、割の良い仕事は既に無くなっている。


「……いつも通りの状態だな」


「普通は朝早く起きて自分に合っていて、報酬額が少しでも高い依頼を選ぶので。でも、ソウスケさんにはあまり関係ありませんよね」


しっかりと睡眠をとりたい、もしくは二度寝がしたいソウスケ。

もちろんそんな事をすれば割の良い依頼は既に無くなって、今のような状態になる。


ただ、ソウスケの場合は懐に余裕があるので無理して報酬額の良い依頼を勝ち取る必要は無い。


こうしてギルドの依頼を受ける場合、ソウスケは大抵常時張り出されている依頼書を選ぶ。

その依頼も成功報酬は大した金額にならないのだが、それでも常に余裕のあるソウスケには関係無い。


「これを受けるとするか」


「コボルト五体の討伐ですか……まぁ、私達のランクを考えれば妥当ですね」


ミレアナの本音的には物足りない依頼ではある。

しかし、それなら適性ランクの高い依頼を受けようとしても、現在Eランクであるソウスケ達は依頼を受ける実力を持ってないと弾かれてしまう。


「すいません、これお願いします」


「かしこまりました・・・・・・あの、ソウスケさん達は今後他の街に向かう予定はありますか?」


「いえ、特に無いですけど……どうかしましたか?」


「実はEランクの方々の中で実力の高い人達にこの依頼を薦めているのですが」


受付嬢から渡された紙を受け取り、その内容を読み始める。


(……ゴブリンの討伐。それだけを見れば大したことない依頼なのだろうけど、問題は数か)


依頼内容はゴブリンの大群の偵察だった。

確認された数を考えればジェネラルといったCランクのモンスターがいてもおかしくは無いので、Eランクのパーティーを複数にプラスしてDランクの冒険者数名で確認を行う。


依頼の報酬額は偵察という内容を考えれば高く、受けようと思うEランクの冒険者は多い。

しかし、それでも万が一を考えてギルドが認めた優秀であるEランクの冒険者のみに声を掛けている。


そしてギルドとしては是非ソウスケには参加して欲しいと考えていた。

今でこそソウスケにはミレアナと優れた遠距離攻撃を持つパーティーメンバーとザハークと言う接近戦に優れた力を持つ従魔がいる。


それ故にソウスケが悠々自適に過ごせているのはその二人のお陰だと思う人物が多い。

だが、ギルドはソウスケが冒険者になる前から大量のモンスターを一人で殺せるだけの実力を持っている知っている。


なので、万が一の危機が起きても問題無いと考えていた。


「……基本は偵察なんですよね」


「はい。五日後に顔合わせをして後日偵察を行います」


ソウスケとしては別に受けても問題無いと思っているので、パーティーメンバーのミレアナの意見を聞くために目を向ける。

ミレアナとしても特に不満がある依頼では無い。


「分かりました。その依頼を受けさせてもらいます」


「ありがとうございます!!! えっと、それではこちらの依頼も受理しましたので、お気をつけて」


「はい、どうも」


受付嬢は上の人間から絶対にとは言われていないが、なるべくソウスケ達にこの依頼を受けて貰えと伝えられていた。

なので受付嬢としてはソウスケ達が依頼を受けてくれたことでホッと一息という心境だ。


「それにしても・・・・・・やっぱり解体専門の人達の言葉があんまり解らない」


ソウスケが依頼を受けてくれたのは自分としても嬉しかった。

それでもソウスケが解体専門の職員達や上の人達が言う様な実力者には見えない。


「隣の美人エルフさんが実力者ってのはなんとなく分かるけど、やっぱりちょっと不安だなぁ~~~」


「何が不安なんだ?」


「えっと、上の人達が今回の偵察で期待しているEランクのソウスケって子供です」


「あぁ~~~……あの子の事か」


受付嬢に話しかけたギルド職員は元冒険者であり、周りと比べて相手の技量を見抜くことに優れていた。

なので完全にでは無いが、ソウスケがどのような実力を持っているのか大体解ってしまう。


「あの子は自分の実力を隠すのが、皮を被るのが上手いんだろうね。だから、戦いを知らない人からすればただの子供に見えてしまう」


「と、という事は……かなりの実力の持ち主ということなんですか?」


受付嬢の問いに男は首を横に振って答える。


「かなり、なんて実力では済まない力を持っている。それだけは確信を持って言えるね」


ソウスケの年齢で一体どうやってそれほどの実力を手に入れたのか、男としてはそれが最大の謎だった。

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