四百二十二話 今回はどちらでも良い

「まぁ、やっぱり投擲で事足りたな」


「それはそうでしょう。ソウスケさんの相手になるモンスターは最低でもCランク……コボルトならばジェネラル以上でなければ話にならないかと」


「ミレアナの言う通りだな。ただ、既にソウスケさんはコボルトキングを倒してしまっている。だから、コボルトでソウスケさんに敵う種はいないだろう」


過去に一人でコボルトキングを倒したソウスケ。

コボルトキングのランクはBであり、殆どの冒険者や騎士、傭兵たちが単独では倒せない高ランクのモンスターだ。


しかしソウスケにそんな事は関係無く、身体能力と技を駆使してノーダメージで倒してしまう。


「いえ、コボルトキングがコボルトという種の頂点ではありません」


「そうなのか? 一番上といえばキングだと思うんだけど」


「キングより更に上の……ロードが存在します。まぁ、基本的には現れないモンスターですが」


あらゆる種の頂点に立つロード。

ただそれは立場だけが一番高いというだけで、戦闘力に関してはキングの方が高い場合も当然ある。


「力では下のキングに劣る場合は有りますが、その分身に付けているスキルが多い・・・・・・という話を聞いたことがあるだけなので、事実かどうかは分かりませんが」


「……いや、そういった存在が実在する可能性は十分にあるだろう。モンスターの寿命がいくつまでなのかはしらないけど、戦って生き抜き続ければそういった領域に到達する可能性はゼロでは無い、と俺は思う」


「なるほど……それなら、俺もオーガロードになれる可能性があるという訳か」


「そういう事だな! でも、希少種であるザハークがロードまで成長したらランクはどうなるんだ??」


「おそらくですが、ランクSに到達するかと思われます」


ランクの中でも強さはピンキリではあるが、それでもSランクに認定されるモンスターは人類からすれば全て埒外な化け物に変わり無い。


「はっはっは、そうなったら殆ど敵無しになるか」


「……いや、そんなことは無いと俺は思う。いつも、ソウスケさんが言っていただろう。ダンジョンでは何が起こるか分からないと。なら、ダンジョンに入れば俺より強い敵が現れてもおかしく無い」


「確かにそんな事言ってたかもな。それを考えれば確かにそういった相手がいてもおかしく無い、か……ミレアナ、そういったダンジョンって実際に存在するのか?」


「どうでしょうか? あまり確証のある話は聞いたことがありません。ただ、やはりダンジョンは年月が経つ事に階層を増します。もちろん限界はあるでしょうけど、Sランクのモンスターがダンジョンに存在すると期待して大丈夫だと思いますよ」


ミレアナも偶に情報収集をしているが、それでも全ての情報を得ている訳では無い。

そしてSランクのモンスターが存在するダンジョンは結果だけで言えば実在する。そしてそのダンジョンが大都市のギルドが管理している。


なのでソウスケ達がそのダンジョンに挑むのも不可能な話ではない。


「それでソウスケさん、今回受けたゴブリンの群れの偵察……まさか本当に偵察だけで終わらせるつもりなのか?」


「だって、そういう依頼な訳だしな。でも、万が一の場合は俺らで討伐して良いから俺達を偵察パーティーに入れたんだろ」


「万が一が起きてしまった場合、私達なら何とか出来ますからね」


例えゴブリンジェネラルやゴブリンキングがいようとも、ソウスケ達には関係無い。

本当に最悪な状態を考えればもう少し戦力が欲しいところだが、ソウスケには契約している二体の悪魔がいるので、そうなった場合でも全く問題無い。


「そうか・・・・・・なら、俺はその万が一が起きる事を祈ろう」


「おいおい、まったく。ギルドとしてはその万が一は起きて欲しく無いんだぞ」


「それなら、ソウスケさんとしてはどうなんですか?」


「俺としては……今回に限れば、別に万が一は起きなくても良いかな」


特に旨味のある素材が無いゴブリンではいくら強くなって進化しようとも、魔石以外はそこまで価値が無い。

なのでソウスケとしては今回の一件で万が一が起きても起きなくてもどちらでも良かった。

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