四百二十話 それに文句は無い
「何か楽しい事でもあったんですか?」
「なんでそう思うんだ?」
「嬉しそうな顔をしているからです」
合流した二人は一緒に宿で夕食を食べている。
相変わらず美味い料理に夢中なソウスケにミレアナは気になっていた事を尋ねた。
「そんな顔をしてたか」
「はい、そんな顔をしてました」
「そうか……まぁ、別に隠す事でも無いんだけど、今日は森を散策してる時に面白い奴に会ったんだ」
「面白い奴、ですか」
面白い奴と言われ、直ぐに頭の中でイメージを浮かべるミレアナだが、どのような奴なのかしっくり来るイメージは思い浮かばなかった。
「俺達と同じEランクの冒険者なんだけど、実力も俺達と似たような感じだったんだよ。つっても、完全に俺達と同じって訳じゃ無いけどな」
「つまり、Eランクに当てはまらない実力を持つ者と出会ったという事ですね」
「そういうことだ。普通の人族なんだけど、体の構造がちょっと特殊な感じだったと思う。オークを一人で倒せたしな」
「オークを一人で・・・・・・年齢はソウスケさんとさほど変わらないのですか?」
オークを単独で倒せる。その功績は基本的にEランクの冒険者が達成出来る内容では無い。
仲間であるソウスケ程ランクに見合わない冒険者はいないが、それでもランクに合わない実力を持つ冒険者は稀に存在する。
しかしそれでもソウスケが話した内容に少なからず驚く。
「俺より少し年上で冒険者歴も長いけど、せいぜい一年から二年の間だった気がする」
「その歴で……もしかしてですが、色々と渡しましたか?」
「おう。ソロで行動してる奴だったからな。武器とか道具とか結構渡した」
「そうですか。それほど見込みがある人物ということなんですね」
独断で他者にダンジョン内や盗賊団から得た武器や道具を渡すことにミレアナは苦言を申すつもりは無い。
そもそもな話、ダンジョンをあそこまで快適に攻略できるのはソウスケの力があってこそなので、ミレアナは自分がそういった話に突っ込む必要は無いと思っている。
「……同じレベルになって、スキル関係無しなら俺より身体能力が上なのは間違いないだろうな」
「特異体質、ですか。しかしその様な事情を良く見抜けましたね」
自分の強さを他人に話すのは得策では無い。
なのでミレアナはソウスケが知り合った冒険者が自ら自分の特異体質を話したとは思えない。
「いや、正確な事は解かって無いよ。でも、それらしい事情をちょっと知ってたからな。もしかしたらと思ってある事を聞いたら見事に一致してたんだよ」
もしかしたら先天的に身体強化、もしくは肉体強化のスキルを持っていたので常人より強い体を持っていた可能性だってある。
「それでもその可能性を見抜けたことは凄い事だと私は思いますよ」
「そ、そうか? まぁ……優れた鑑定系のスキルを持っている人じゃ無いと難しいだろうな」
相変わらず直視出来ないほど真っすぐな笑顔を見せるミレアナにソウスケは照れながらも妥当な判断を口にする。
(後で鑑定を使って調べて確かに俺の予想と一致した内容なのは分かったけど、それでもそこまで正確な内容が視れた訳じゃ無い)
もう少しこの街に滞在する予定のソウスケ。
もしかしたらまた合う機会はあるかもしれないと思いながらその日は終わった。
だがソウスケはそう遠くない内にグランと再会する事になる。
楽しい夕食の時間を終えた翌日、ソウスケはミレアナとザハークと一緒にギルドへと向かっていた。
「ソウスケさんが興味を持つほど強い者がいたのか、しかも同じEランクに」
「そうなんだよ、俺も結構驚いてさ。もしかしたらかなり有名になるかもしれないから先に恩を売っておいたんだ。どこかで返してくれるかもしれないし」
「そういうところは抜かりないですね」
ギルドに到着した三人のうちザハークはいつも通り外で待機し、ソウスケとミレアナは何か面白そうな依頼がないかと中へと入って依頼書が張り出されている掲示板に向かった。
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