三百八十二話 好待遇
「それでは今日もお願いします」
「「「こちらこそ、よろしくお願いします!!!」」」
ミレアナと三人の女性冒険者が元気良く鉱山の中へと入っていく。
いつもなら鉱山の入り口手前で若手の顔に自身がある冒険者達がミレアナをナンパしようとするのだが、ここ数日はミレアナ一人では無く複数の冒険者と一緒に鉱山に入っている。
なので一人では危ないからという理由で誘うことは出来ない。
ならば女性だけでは危ないし、男手が必要だろという理由で誘えないのか?
それも無理。
何故ならばミレアナと一緒に行動している女性冒険者達は若手の冒険者達よりも経験を積んでおり、実力が上だという単純な理由。
これでルーキー達が美女達を都合の良い理由を付けてナンパすることが出来なくなってしまった。
「あなた達のお陰で本当に助かっています。確かな証人がいない状態で物理的に解決するのはよろしくないですからね」
「いえいえそんな、こっちこそミレアナさんの提案のお陰で良い収入を得ることが出来てるので、ねぇ?」
「そうです!! こんな良い仕事は正直初めてです!!!」
「私も嬉しいけど、ちょっと申し訳ないというか……」
ミレアナはモンスターの素材や魔石、鉱石を報酬として渡すという事で彼女達を雇った。
その話をミレアナから聞いたソウスケは自分達が傍にいないことで掛かる迷惑を解消してくれている事に感謝し、一人につき銀貨を二枚、計六枚を彼女達に渡すように伝えた。
最初にミレアナから銀貨を二枚づつ受け取った三人は何故自分達が銀貨を貰っているのか理由が解らず、困惑した。
しかしミレアナから事情を聞いて直ぐに納得……は出来なかった。
一緒に行動することでモンスターの素材や魔石を譲ってもらい、尚且つ同行する度に銀貨を二枚づつ貰える。
そんな美味しい仕事はまず無い。
(モンスターの感知に優れているから奇襲を受けることは無い。ゲスイ事を考えている冒険者達の気配にも気づく。そして何故かそこそこ価値のある鉱石の場所を良く発見する。一人だけで多くの役割をこなせるタイプの冒険者は確かにいるけど、それでもレベルが高過ぎる)
アタッカーであるシャリアの仕事は当然ながらモンスターと遭遇した時の討伐、素材と魔石の剥ぎ取り。
そして鉱石を発見した時の採掘。
やっている事はいつもと変わらないが、それでも安心感が違う。
(それに装備のアドバイスや魔力操作の指導までしてもらって……私達絶対にその分の仕事をしてない気がするのだけど)
ここ数日、稼げる金額は格段に増えた。
しかしミレアナからアドバイスにより、稼いだ金は装備代へと消えた。
ただ、自分達が勝って生き残るための必要経費だと納得している彼女たちに不満は無い。
そして魔力操作の訓練方法を教えて貰い、ここ数日で直ぐに効果は現れないがミレアナの実演を見せて貰ったことで、冒険終わりの夕方にも直ぐにご飯を食べて大浴場に行って寝るといったループは行っていない。
必ず夕食後、もしくは寝る前に魔力操作の訓練を行うようになった。
三人は本当にミレアナに感謝している。
ただ、そこでやはり一つ疑問が浮かぶ。
「あの、一つ聞きたいんですけど良いですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「その……何故、ミレアナさんは同じパーティーの少年の……ソウスケ君と組んでるんですか?」
嫉妬などの醜い感情は含んでいない。
しかしただただ疑問だった。
ミレアナがザハークという名のオーガを従魔として従えているというのは……多分納得が出来る三人。
ただ、その二人を抑えてリーダーとして活動するソウスケとは一体どんな人物なのか。
そこが三人はここ数日ずっと気になっていた。
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