三百七十八話 誰も知らない場所

「こいつはぁ……すげぇなおい」


掘って採掘しての作業を繰り返していたソウスケ達の前にとあるモンスターが姿を現した。


そのモンスターの名はレインボータートル。

背中に背負う甲羅は虹色の鉱石となっている。


「綺麗……ですね」


「あぁ、しかし……強い」


オーガのザハークよりも体が大きいレインボータートルはランクBと普通の魔物とは格が違う。

防御力に至ってはAランクに届くと言われている。


(宝石はちょいちょい取れていたが、あの背中の鉱石は是非ともキングの駒として使いたい!!!)


一気に戦意が沸いたソウスケから闘気が溢れ出す。

しかしレインボータートルは自身が襲われるかもしれないというのに一向に構えない。

それどころか前足を一本前に出し、ソウスケにちょっと待てと伝える。


そんな様子に三人が不思議に思っていると、レインボータートルは体を震え始める。


「な、なんの行動なんだ?」


「も、申し訳ありません。私も何をしようとしているか解りません」


ミレアナの知識にも無い行動。しかしこれから攻撃を放つように思えなかった。

震えが収まると、なんとレインボータートルの背中の鉱石の甲羅が落ちた。


「ッ!!!! えっ! ちょ、待てい!!!!」


虹色の鉱石に傷が付くのはまずいと思い、ゼロからマックスに加速したソウスケがギリギリのタイミングで受け止めた。


「えっと……もしかして鉱石を渡すから自分を襲わないで欲しいという事でしょうか?」


ミレアナの言葉にレインボータートルはゆっくりと頷く。

レインボータートルの戦意が無い状態にソウスケは過去に出会ったモンスターを思い出す。


(こいつ、ブロッサムドラゴンと同じように知能が高いモンスターか。防御力は高そうだけど俺ら三人がかりで戦えば倒せそうだからな。それを察して交渉って手段に出たわけか)


ソウスケとしてはレインボータートルの素材は全て欲しいところだが、相手に全く戦意が無い状態にも関わらず襲い掛かるのは気が引けたので一先ず虹色の鉱石をアイテムボックスの中にしまった。


「? ついて来いって事か?」


ソウスケが自身の甲羅をしまった事を確認したレインボータートル顎を動かして三人に付いてくるように促す。

誘われるがままにレインボータートルに三人は付いて行く。


そしてかなり深い場所にたどり着くと、そこには多種類の宝石が壁から姿を現していた。


「な、なんだここは……ま、眩し過ぎるだろ」


「なるほど。これらを食してあの虹色の甲羅を手に入れたということか」


そのことについて三人はもう驚かない。

しかし事実は多少違い、レインボータートルは一つの穴を前足で指す。


「もしかして、地中を掘ってここまでやって来たのか!?」


どや顔でそうだと頷くレインボータートル。


(こいつは元からレインボータートルで、この鉱山には餌を求めて来たって事か)


何故この鉱山にレインボータートルがいるのかを理解したソウスケは通ってきた道に目を向ける。


「そり進化したばっかであんな芸当は出来ないよな」


レインボータートルはソウスケ達を連れて来たルートに結界と幻術を仕掛けてり、魔力感知に長けた者でなければ行き止まりに見えてしまう。


そしてレインボータートルは自分が必ず生き残れるようにソウスケ達に自身の食場へと案内した。

経験上、人は宝石が好きだという知識を持っている。


「……は、ははは。ありがとな、レインボータートル。そんじゃ、ちょっとだけ貰うな」


ソウスケ達にとっては大量と言える量だが、レインボータートルにとってはごく少量と思える量なので特に文句を言うことは無かった。


「この場所は誰にも言わないから安心してくれ」


採掘を終えたソウスケの言葉に安心した笑みを浮かべ、レインボータートルは拠点の食場へと戻った。

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