三百七十七話 乱入

掘っては掘って鉱石を採掘し、モンスターと遭遇すればぶっ飛ばす。

そんな日々が十日ほど続く。


勿論その間に何も無かった訳では無い。

ミレアナの美しさに惹かれ、一緒に依頼を受けないか誘う。

しかしそれは建前で本当の目的は不純なナンパと変わらない。


まずは口で断ろうという事でソウスケが間に入って自分達は基本的に他の冒険者と組むつもりは無いと伝える。

その際に敵意を漏らしたりなどはしない。

ただし拒否感はにじみ出ている。


だが、ソウスケの強さを一ミリも感じられなかった冒険者はソウスケの事を軽く馬鹿にした後、もう一度ミレアナを依頼に誘おうとする。


その瞬間、ナンパ冒険者達は体を大きく震わせる。

何故自分の体が震えたのか?

直ぐには理解出来なかったが、目の前の美女エルフが原因だと気づくのにそこまでの時間は掛からなかった。


「私の命の恩人を馬鹿にするとは、良い度胸をしていますね」


笑わず怒らず、ただただ真顔。しかしナンパ冒険者達にはそれが余計に恐怖を感じた。


次の瞬間、ミレアナの前蹴りが一人の腹に炸裂する。

蹴り飛ばされた冒険者はミレアナのナイスなコントロールにより、地面を数度バウンドして他の同業者に迷惑を掛けることなくウザいナンパ男を退治した。


いつもならこれで一件落着なのだが、今回は絡んできたナンパ冒険者の声がかなり大きく、ギルドの外まで聞こえていたこと。

それがウザ男共に悲劇が降りかかる原因となる。


一体鬼人……ではなく、オーガがギルドの中へと入って来た。


「おまっ、ちょっ、それはヤバいって!!!」


ザハークがギルド内に入ってきているのを目にしたソウスケは、目玉がギャグマンガの用にが飛び出るのではと思うぐらいに驚き、慌ててザハークを外に戻そうとする。


しかし本気で動いたザハークを少し気が抜けていたソウスケが止められる筈が無く、ザハークはナンパ冒険者達の目の前に立っていた。


「俺のマスターを貶すとは、どうやら潰されたいらしいな」


ナンパ冒険者達が悲鳴を上げるよりも先にザハークの拳が当たり、ミレアナの時と同様に地面を数度バウンドしながら吹っ飛んだ。


「ふんっ!! 大した実力も無いくせによく偉そうに出来るものだな」


ミレアナに声を掛けた冒険者達の実力は決して低い訳では無かった。

ルーキーの域を抜けて数年。才能もそこそこあり、ギルドの職員やベテラン達からはまだまだこれから伸びるだろうという評価を受けた者達。


そんな将来有望な冒険者が恐怖に襲われていたとはいえ、瞬殺された。


ナンパ男達と同じようにミレアナに声を掛けようと考えていた男性冒険者達は同時に体が大きく震える。

中には少々漏らしてしまった者もいた。


「おいおい、頼むからあんまり速攻で手を出すなよ」


「ですが、言って素直に引き下がる者達ではありませんでした。なので力付くで追い払うのが一番かと思いました」


「俺は単にムカついたから」


ミレアナの言い分は解らなくもない。

しかしザハークの言い分は、ソウスケ的には嬉しいがアウトだった。


もしかしたらギルドの職員に呼び出されるかもしれないと思ったが、ソウスケの視界に入った受付嬢は皆グーサインをソウスケ達に向けていた。


不問? を確認したソウスケはミレアナとザハークの手を引いて速足でギルドから出た。


(あの後ギルドに入っても特に何もギルド職員から言われることは無かったから、多分問題無かったんだよな)


ミレアナとザハークが殴って結果、ナンパ冒険者達が負った怪我は軽いものでは無かった。

回復魔法を使えないのなら、ポーションを飲まないと後遺症が残るレベルの怪我。


「・・・・・・なぁ、お前ら。もうちょい手加減を覚えようか」


「どうしたんですか急に? 手加減なら出来ますよ」


「俺は……ちゃんとは出来ないが、ある程度は出来るぞ」


二人の言葉を聞いてソウスケはもう何も口を出さなかった。

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