三百六十四話 そもそも噂が

「・・・・・・中々見つからないな」


「そうですね。もしかしたら鉱山の外に出てしまったかもしれません」


ソウスケはベットの上に転がり、深く溜息を吐きながら水色のリザードを探し続けた三日間を振り返る。


(朝から夕方まで探し回ったのに手掛かりが一つも見つからなかったってのは流石に運が悪すぎないか?)


ソウスケ達が一度通り過ぎた場所に水色のリザードが現れ、上手い具合に巡り合っていない可能性もある。

しかし三日間探し続けて冷気を感じる場所が一つも無い。


「水色のリザード・・・・・・アイスリザードは、もしかして一切氷の魔力や特性を使わずに戦っているのかもしれないな」


「そうでしょうか? 確かにこれだけ探して冷気を感じる場所が一つも無いというのは疑問に思いますが、氷魔法は敵を倒すのに非常に便利な能力だと私は思っています」


ミレアナも氷魔法を使えるのでその有能性が身に染みて解っている。


「だから、氷の効果を持つ攻撃を使わないという考えはあり得ないかと」


「俺も自分の手札がそれなら惜しみなく使ってると思う」


「自身の存在を隠す為に使っていないという可能性がゼロでは無い思います。その場に居るだけで冷気を発するでしょうが、通り過ぎるだけでは大して冷気は残りません」


「そこまで頭が回る個体がいるか?」


モンスターもレベル上がり、経験を積めば戦いや野生の中で生き残ることに関しては頭が回るようになる。

だが、それでも今回噂が流れているリザードがそれ程までに知能が高いのか。


ソウスケには何故かそう思えなかった。


(ザハークみたいな個体がそう簡単にいてたまるか。でも・・・・・・確かにミレアナの言う通り可能性はゼロじゃないよな)


もし仮に探しているリザードがザハークの様な個体だったら倒すのが非常に面倒。

ソウスケはアイスリザードに出会ったら即鑑定を使おうと決めた。


「ザハークの様な例がいますのであり得ない事ではないかと。それと・・・・・・もしかしたら噂自体が嘘という可能性もあります」


「・・・・・・そ、そうだよな。その可能性も無きにしも非ずだもんな」


元居た世界の様に決定的な証拠がある訳では無い。

単純に人伝えに伝わった内容なので完全に信用は出来無い。


「明日は、一旦鉱山の周囲を探してみよう」


「わかりました。それでは横穴の様な場所が無いか探しながらアイスリザードを見つけましょう」


アイスリザードはそもそも存在しないかもしれない。

そんなテンションダダ下がりな可能性が浮かんでしまったソウスケは、アイスリザードの発見を諦めるか否かで超迷っていた。


(元々はトーラスさんからチェスの特注依頼だ。それにプラスして鉱石の採掘に鍛冶。本来の目的を放棄するのは良くない)


チェスのデザインでも考えよう。そう思いながらベッドに入ったソウスケ。

しかし朝から夕方までアイスリザードを探索し続けた疲れが溜まっており、アイデアが出る前に眠りに入ってしまった。



「今日は鉱山の周辺でそのアイスリザードを探すのか」


「あぁ。この三日間で鉱山全てを歩き回ったって訳じゃ無いけど、手掛かりすらなかったんだから別の場所を探そうと思ったんだ」


「なるほど。確かにギルドの人間が管理している出入口以外の場所に外へと繋がる出入り口があってもおかしくは無いな」


「そういう事だ。まっ、見つかるかは分からんけどな」


鉱山内と比べて慎重に進む必要が無い。

なので探索期間は二日と決めていた。


(二日以上時間を掛けても見つからないならとりあえず鉱山の外にはいないって事で確定だ)


もしかしたら噂は嘘かもしれない。

そんな考えは頭から捨てて探索を開始したソウスケ達。


しかし三時間後、予想外な結果にソウスケはある意味、今まで見つけられなかったことに感謝した。

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