三百六十三話 決まった目的、しかし

ソウスケ達の席から少し離れた場所で食事を取っている冒険者達が、今日耳にした噂について話し合っていた。


「そういえば鉱山で水色のリザードを見かけたって話を聞いたぞ」


「青じゃ無くて水色か。もしかして氷結晶でも見つけたリザードがそれを食べてしまったのかもしれないな。にしてもそれは随分勿体無いな」


モンスターが何かしらの鉱石を食べた事で亜種に変化する可能性はある。

だが特に何も変化は無く、腹を壊してしまう個体も存在する。


そしてモンスターが鉱石を食べて亜種に変化する場合、それ相応の量が必要となる。


氷結晶は主に雪山でしか見つかる事は無く、一般的な鉱山で見つかる事は少ない。


「それな。でも、リザードの亜種が出ると面倒だよな」


「絶対に犠牲者は現れるだろう。それに体色が水色って事は、氷の攻撃を使うだろうから相性云々関係無しにやり辛い相手だ」


ある程度知能があるモンスターは自身の強みを理解している。


実戦経験を積み、自身の技を理解しているモンスターは冒険者と同じく、敵対する相手に勝つ方程式が解る。

氷の魔力を使うモンスターの方程式はほぼほぼ変わらない。


しかし変わらないからといって必ず勝てる相手では無い。


「おそらくギルドから特別報奨金が出るだろうが、倒そうと思う奴がどれだけいると思う?」


「ベテランより上は基本的に興味が無い筈だ。自分の実力を過信したルーキー辺りが挑む。俺はその可能性が一番高いと思うぞ」


厄介なモンスターを相手にせずとも、ベテラン以上の冒険者達は様々なコネを持っているので、依頼に困る事は無い。


だが、ルーキーの域を少し抜けた程度の冒険者では一カ月ほど働かなくても済むほどの余裕もコネも無い。

よって多少の危険はあれど、報酬の高い依頼を見つければ自ら受けようとする。


「まっ、そこそこ腕の立つ冒険者が偶々鉱山の中で遭遇すれば対処してくれるか」


「だな。というか、そもそも鉱山の外に出てる可能性だってある」


だから何も俺達が心配する必要は無い。そう言いたげな表情をしながら二人は自分達の冒険者人生に乾杯し、ワインを煽った。


そんな二人の冒険者を聞いたソウスケは新しい獲物を見つけた嬉しさで顔が笑っていた。


「一先ず、明日の予定は決まりましたね」


「あぁ。片方の冒険者の言う通り、もう鉱山外に出てしまったかもしれないが、探す価値有りだ」


明確な目的が出来た事でソウスケの目にはやる気が満ち溢れていた。


(そういえば、前回はダンジョン内でランドリザードと戦ったよな。随分とリザードに縁があるみたいだな)


リザード、というよりは竜種に縁があると言えるだろう。


ダンジョンで遭遇したワイバーン、ランドリザード、ブロッサムドラゴン。

冒険者になって一年も経たないルーキーが遭遇する様な面々では無い。


そしてそんな面子に遭遇すれば、基本的に生きて帰れないのが当たり前。


明日の目的が決まったソウスケは予定を鉱石を採掘するのに使う時間の割合を減らし、水色のリザードを探す時間を大幅に取る事にした。


しっかりと夕食を取り、深い眠りについてから一夜が明ける。

朝食を食べて完全に目を覚ました三人は意気揚々と鉱山を目指す。


ソウスケから水色のリザードの話を聞いたザハークはソウスケと同様にワクワクしており、早く遭遇したいと思っている。


しかし物事はそう簡単には進まず、三日経ってもリザードの亜種を見つけることは出来なかった。

一応鑑定で調べた結果、珍しそうな鉱石なら採掘を行ったので収穫がゼロという訳では無い。


だがそれでも目的のリザード亜種が見つからないことにソウスケのテンションはドンドン下がっていった。

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